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すると、航平はそこで気がついた。顔を上げた少女たち二人の頭には、ふさふさの丸い耳がついていることに。
この祠を訪れるものは、今のところ航平と同じ人間はいなかった。人の姿をしていても、人にはない耳や尻尾があった。
航平はこの祠から先に行ったことがない。この先の世界がどうなっているのかわからない。正直興味はあるが、この世界のどこでもないところだと知ってしまったら、正気を保っていられる自信がなかった。
そもそも、引きこもりにそんな行動を起こす気概はない。
「きょ、今日はどうしてここに?」
そう航平が訊ねると、二人の少女のうちの長い髪の方が口を開いた。
「はい。今日は神様にお願いがあってきました」
まだ幼い年頃でありながら、落ち着いていて丁寧な口調だった。その少女は右隣にいるもう一人の、髪の短い少女に憮然とした視線を向けて続けた。
「このわからず屋に、シシグアが私のものだってことを言ってください」
その台詞に納得がいかないのか、髪の短い少女が不満の声を上げた。
「違うよ! シシグアは私のだもん!」
「違う! 私が最初に見つけたんだよ!」
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