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「私の方が先だもん!」
髪の短い少女は立ち上がった。
なんだか緊迫した雰囲気に、航平は簾を挟んでいたものの、身を引いてしまう。と、テンカが声で制した。
「静まりなさい。ここは神聖な場所ですよ」
その一言で、争う二人は言い合いを止めたが、一触即発のままなのは変わらなかった。
髪の短い少女が座り直したのを見て、航平はテンカに言った。
「あ、あの、テンカさん」
「さん付けは不要です。テンカとお呼びください。神様」
「あ。は、はい」
航平はテンカの威圧感にも若干たじろいだ。それでもどうにか話を進めようと、慎重に口を開いた。
「その、シシグアというのは?」
「おそらく、少女たちの間にいる獅獣の名前だと思います」
「シジュウ?」
「はい。獅獣は森の守り神と言われ、体長は大きいもので三メートルほどの大きさになります」
航平は少女たちの間にいる獅獣の翼に視線を向けた。
この騒ぎの中、眠っているのか、身を丸めて動かなかった。
体は少女たちよりも小さいので、まだ子供なのだろう。
「飛べるの?」
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