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恍視点 10年後の今
仕事の合間の急な電話。休憩時間を教えたはずはないのにいつもあいつは決まってこの時間に電話をかけてくる。
会えないか、と。
つまり端的に言えば「ヤりたい」と言ってるのだが。
会うことは義務じゃないがどうしても足があいつのほうに向いてしまう。
いまだに好きなんだこのダメ男が。
妻もいるし、大企業である有明銀行の跡取りで、顔もよくて、器用で。
性格はちょっと難ありだが。
そんな要と自分が釣り合うはずなかった。
このままつるんでいたら要がどんどん堕ちていってしまう。
本当は今すぐに手を放して本来のところに帰すべきなんだと思う。
そう思うからと言って、それができるかとは違う。
好きな相手からちょうどいいから、という理由でも。
誘われているなら離せるわけがない。
どうしたもんだろうか、と頭をかきながららも結局はホテルに向かっていた。
「お疲れ、要。」
「恍。先にいたのか。」
満面の笑みでそういってこちらによる姿は小動物のようだ。
ベットわきにスマホを置いて、要の頭をなでる。
「子ども扱いか?」
「そうじゃないよ。」
可愛いなって思っただけ。
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