73人が本棚に入れています
本棚に追加
恍 視点
高校時代、俺にはたった一人の親友がいた。
有明 要。
隣のクラスのくせによく自分のクラスに来てくれた。
唯一無二の親友。
甘いものが大好きで、
基本的にやればなんでも出来てしまう天才肌だった。
自他共に認めるイケメンで、老若男女問わずモテる。
いつも明るく飄々としていて、
ときに凄い我儘を言って周りを振り回すけれど、
持ち前の愛嬌で許されていた。
誰にでも同じように笑顔で接し、
子供のような冗談を言うこともあった。
しかし、ふとした時にまじめな表情になる。
将来を見ている様な少しだけ冷たさを持つ顔だった。
そこも含めてギャップとして好まれていたのだが。
要はよく言う遊び人で、隣には常に彼女がいた。
時に恋人が男性のこともあったが誰も長続きしない。
初めて会ったときは柄の悪そうな男だと思ったが、
意外と面白くて優しかった。
居心地がよくてあいつの隣に三年間いたわけだ、が。
その居心地の良さに甘えすぎた気がする。
要に対して卒業式間近に俺が抱えていた感情は、
友愛だけじゃないかった。高校を卒業した後でも
一緒にいたいと思うのはまだあることかもしれない。
そうじゃなかった。
いつ、親友の存在が、
想い人に変わってしまったのかはわからない。
あいつは何も変わっていない。
変わったのは俺の気持ちだけだ。
好きだった。
要の仕草が、お茶目さが、優しさが。
全部愛おしかった。
あいつの隣にいるのは決して女子だけじゃなかった。
たまに短い間でも要の恋人が途絶えることもあった。
チャンスは、なくはなかった。
それでも行動に移せなかったのは、
自己の醜いプライドを守るためだろう。
もっと要の近くにいたい気持ちはあったが
親友、という肩書も手放せなかった。
だから墓場まで持っていく覚悟で隠してきたんだ。
あの日まで。
最初のコメントを投稿しよう!