恍 視点

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恍 視点

高校時代、俺にはたった一人の親友がいた。 有明 要。 隣のクラスのくせによく自分のクラスに来てくれた。 唯一無二の親友。 甘いものが大好きで、 基本的にやればなんでも出来てしまう天才肌だった。 自他共に認めるイケメンで、老若男女問わずモテる。 いつも明るく飄々としていて、 ときに凄い我儘を言って周りを振り回すけれど、 持ち前の愛嬌で許されていた。 誰にでも同じように笑顔で接し、 子供のような冗談を言うこともあった。 しかし、ふとした時にまじめな表情になる。 将来を見ている様な少しだけ冷たさを持つ顔だった。 そこも含めてギャップとして好まれていたのだが。 要はよく言う遊び人で、隣には常に彼女がいた。 時に恋人が男性のこともあったが誰も長続きしない。 初めて会ったときは柄の悪そうな男だと思ったが、 意外と面白くて優しかった。 居心地がよくてあいつの隣に三年間いたわけだ、が。 その居心地の良さに甘えすぎた気がする。 要に対して卒業式間近に俺が抱えていた感情は、 友愛だけじゃないかった。高校を卒業した後でも 一緒にいたいと思うのはまだあることかもしれない。 そうじゃなかった。 いつ、親友の存在が、 想い人に変わってしまったのかはわからない。 あいつは何も変わっていない。 変わったのは俺の気持ちだけだ。 好きだった。 要の仕草が、お茶目さが、優しさが。 全部愛おしかった。 あいつの隣にいるのは決して女子だけじゃなかった。 たまに短い間でも要の恋人が途絶えることもあった。 チャンスは、なくはなかった。 それでも行動に移せなかったのは、 自己の醜いプライドを守るためだろう。 もっと要の近くにいたい気持ちはあったが 親友、という肩書も手放せなかった。 だから墓場まで持っていく覚悟で隠してきたんだ。 あの日まで。
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