恍視点 10年後の今

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そういえば、と地雷を踏み抜く気がしたが気になっていることを一応聞いてみる。 「奥さんにはなんて言って来てるの?」 「残業。」 ちっと舌打ちをしてから要は答える。 「君も相変わらずだね。」 興味のない人は適当にあしらうところ。 「お前もそんなに変わらないだろ。」 確かに、ここに来る時点で俺も何も変わってない。 「子供は?」 「ここずっとレス。」 奥さんがしたくないんだって。 そう、勿体ない。 要がうんざりしたような目をこちらに向けた。 「そんなこといいからさ、恍。」 「わかったって、そんな焦るなよ。」 自分でシャツを脱ぐ。 要にじっと見つめられてるのがくすぐったい。 覆い被さるように要が上に乗る。 「いい眺め。」 「…そうかい。」 最中でも酔ってても絶対にあいつはキスしてこない。 普段はあんなにベタベタ触ってくるのにそれだけはしない。本人曰く、同意があって尚且つ好きな人にしかしたくないらしい。 俺は一生あの唇に触れることは許されないと思う。 一息ついてから棚に置いた煙草の箱を手探りする。右手に箱が当たった感触がして、もう少し手を伸ばし煙草を取り出す。 「要、1本いる?」 「ちょーだい。」 「火ある?」 「ん。」 シガーキス。 軽く触れた煙草に火が灯る。 これ越しなら許されるのにな。
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