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働いて、稼いで、息をして。
また働いて、稼いで、散財して。
そんな生活を続けていたらいつのまにか課長まで上っていた。
仕事の重さで疲れてはいるが、ため息をつきながらスケジュールを確認する。株主総会に取引先の重鎮らと社長と一緒に会談、次の沖縄出張準備、人事異動の手続きに会社の自らを含めた上層部らと飲み会。朝から晩まで埋まっている。
面倒ごとは嫌いだ。ただ顔には出さないだけ。
仕事がひと段落ついてようやく席に座れた。冷め切ってしまった缶コーヒーを開け一口飲む。スマホを見ようかと思ったが、すぐに後ろから近寄る影に気がついて机に置いた。
「成瀬君、お疲れ様。」
「社長お疲れ様です。」
呑気に話しかけてくるなよ何もやっていないくせに。
「このあと君は飲み会だったかな。」
「えぇ、そうです。」
「君は毎度真面目に出席してるよね。」
よっこいしょ、と隣に腰をかけた。
せっかくの休憩なんだから邪魔しないで欲しいんだけど。
「こんなこと私が言うのもなんだが、そろそろ結婚とか考えたほうがいいんじゃないの?仕事一本て感じだよね成瀬君は。」
もういい歳だろと世話を焼いてくる社長に流石に腹が立った。
なるべく静かに抑揚をつけずに言う。
「はっはっはっ。それ、セクハラですよ社長。」
すっと席から立ち上がり喫煙コーナーに向かう。
胸糞悪い。
結婚なんてはなからする気がない。
お前には関係ないだろ。
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