恍視点 10年後の今

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働いて、稼いで、息をして。 また働いて、稼いで、散財して。 そんな生活を続けていたらいつのまにか課長まで上っていた。 仕事の重さで疲れてはいるが、ため息をつきながらスケジュールを確認する。株主総会に取引先の重鎮らと社長と一緒に会談、次の沖縄出張準備、人事異動の手続きに会社の自らを含めた上層部らと飲み会。朝から晩まで埋まっている。 面倒ごとは嫌いだ。ただ顔には出さないだけ。 仕事がひと段落ついてようやく席に座れた。冷め切ってしまった缶コーヒーを開け一口飲む。スマホを見ようかと思ったが、すぐに後ろから近寄る影に気がついて机に置いた。 「成瀬君、お疲れ様。」 「社長お疲れ様です。」 呑気に話しかけてくるなよ何もやっていないくせに。 「このあと君は飲み会だったかな。」 「えぇ、そうです。」 「君は毎度真面目に出席してるよね。」 よっこいしょ、と隣に腰をかけた。 せっかくの休憩なんだから邪魔しないで欲しいんだけど。 「こんなこと私が言うのもなんだが、そろそろ結婚とか考えたほうがいいんじゃないの?仕事一本て感じだよね成瀬君は。」 もういい歳だろと世話を焼いてくる社長に流石に腹が立った。 なるべく静かに抑揚をつけずに言う。 「はっはっはっ。それ、セクハラですよ社長。」 すっと席から立ち上がり喫煙コーナーに向かう。 胸糞悪い。 結婚なんてはなからする気がない。 お前には関係ないだろ。
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