恍視点 10年後の今

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「では、私はここで。」 幹部での飲み会なんて仕事として必要だろうか。せっかくの居酒屋の料理や酒が不味くなるような気がする。それでも一軒目まではついて行くのが主だった。今日もその手を使い、引き留めようとする社長を置いてきた。近日は睡眠不足な上、そこそこアルコールも飲んだ。今日はいいかと思ったがストレスも溜まっている。居酒屋から少し行った公園のベンチに座った。 迷った末、スマホを左ポケットから取り出し、そのまま流れるように掲示板を開く。 「今から会える人募集。25↑30↓希望。」 地図アプリを出して近くのホテルの場所を調べる。家からも銀行からも居酒屋からも会社からも遠い、誰とも会わなさそうなところで。ここでいいか、と安いホテルを指定し書き込もうとした時だった。 「恍…?」 少し自信の無いような幼さの混じった声に呼ばれる。 「は…?」 しばらく呆然とお互い黙る。目の前にいるデカい男は見えていても、いまいち状況が理解できない。 「なんでこんなとこいんの。」 先に沈黙を破ったのは要だった。 それは俺のセリフだ、と言いたくなるが抑える。 「会社の飲み会帰り。」 そっと気づかれぬようにスマホをポケットに戻そうとするが手を掴まれる。 「それは?」 「…俺が何をしようが勝手だろ。君には関係ないよ。」
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