要視点

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しかしいつもの習慣には抗えないらしい。 流れるような手つきで押したボタンは あいつの電話番号だった。 離れようと思っていたのに、 すぐとなりにはタバコを吸う恍がいた。 ただ黙っているのが惜しくて 話すこともないのに口を開いた。 「お前さ。」 「何?」 ゆっくりとこちらを向く恍。 切れ長の綺麗な黒い目と視線があった。 「…暇なの?」 「なんで?」 「いつ呼んでも来るよな。」 「……次から呼ばれても来なくていいか?」 気だるげな顔でそう言うと また煙草を吸い始めてしまった。 「仕事終わったら直行帰んの?」 「特にいる意味もないからね。」 「へぇ…。」 何とか会話を繋げようと頭を回したが 何も出るわけがなく押し黙った。 いつもよりほんの少し遠いところに立つ恍。 違うな。俺が避けてるだけだ。 それでも手を伸ばせば掴めるのに。 お互い煙草を数本吸ったあと、 特に話さずに帰ってしまった。 禁煙するのも難しい俺達に 離れるなんて選択肢あるだろうか。 終いにはそんな結論にまでいたり 考えるのが面倒臭くなってやめた。
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