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恍視点 誘い
きっとその時は気が動転していたか、アルコールがまわってたんだ。
そうとしか考えられない。
今思えば変な言葉を口にしてしまった。
いつも通り私の家のベランダでタバコを吸いつつ遠くを眺める要。
ぼんやりした月明かりに照らされた彼をじっと眺めていると
何、と要は振り返った。
「別に、何にもないよ。」
要の細い指に挟まれた煙草を取り上げて自分の口元に持っていく。
私はあまり吸わない銘柄のものだ。甘い味がする。
ふっ、と一息すると要が驚いたような顔で見つめている。
まだ、幼さの残る華奢な顔だ。
「要、今度。」
「今度?」
「・・・一緒に、旅行にでも行かないか。」
そう誘ったとこまでは覚えている。
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