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お互いに黙ったままゆっくり階段を降りる。
事の重大さが沁みるように足音だけがやけに響く。
恍は今何考えてんだろうな。
恍の肩に手を回そうとしてやめた。
親友、の割にそんな事躊躇するのかとは思うけど。
そのまま不自然に2人で歩き空き教室に入った。
部屋の電気は付けられない、付けたくない。
恍がそっとその場にあった長椅子に腰掛ける。
「要、どうすればいい?」
恍は落ち着いた様子でそう言う。
何、お前余裕じゃん。
「そのままでいい。」
恍の上にそっと覆い被さる。
左手を首に回すと恍が寄りかかってきた。
お前もモテるし、案外慣れてんのな。
そう思うと何かが吹っ切れて、学ランのボタンに乱雑に手をかける。いつもは空きっぱなしの第1ボタンが、卒業式だからか珍しくしまっていた。
恍が誰と付き合ってるとか、誰と寝てるとか知らないけど、このボタン取ったの俺が初めてなんじゃね。
そんなくだらないことを考えつつボタンを解いた。
「君にしては全然喋らないね。」
「誰が減らず口叩きながらヤると思う?」
「親友なんだから、いいんじゃないか?」
親友。唯一の免罪符。
この距離感が普通じゃないのはわかってる。
でもまぁいいや。今は、考えたくない。
ダラダラになりながらもなんとなくお互いにその気になってくる。
ライトなものだったがあの日確かに俺たちは体をつなげた。
親友だからセーフ、という言い訳で。
自分の気持ちも殺して。
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