ヒストリートラベル

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何も進展が無いまま最上級生となった裕二 しかし相変わらず歴史の話は止まらない。 回りくどいと客観的に見られることも知らずにのべつまくなしに喋っていく。 そんなある日のこと 戦国特集を見ながら揚げたてコロッケを口いっぱいに頬張る裕二がテレビを指さして饒舌な口調で喋り出す。 「やっぱ昔の時代って迫力とかあってみんなカッコイイね!! それに比べて今なんか合戦とかの雰囲気も無いから何のロマンもないよね。 あーあー今も昔みたいに戦乱の世の中で俺も活躍出来たらなぁ!」 その途端 今まで黙認していた母の心の中で何かが切れた音がした。 バン!!!! 「今なんて言った??」 「えっなんて言ったって どうした急に?」 「今 あなた今戦争したいみたいな無責任なこと言わなかった?」 「そうだけど それが何?」 「今まで勉強してない事も甘く見てたけど今の発言はいくらなんでも見逃せない! どれだけ人を悲しませるかわかってんの?」 「ちょっ おちつ」 「あなたは口出ししないで!」 戦争すればいい..... 理由もなく無責任な発言をした息子を母親として許すことは出来なかった。 「あなたがこんな発言するなんてガッカリよ 何でなのか頭を冷やして考えなさい。」 怒り心頭に発した母は半ば強引に食器をしまい洗い物を始める。 様子を伺う父と裕二も謎の怒号に怯えながらも心のどこかには腑に落ちない感情を抱いていた。 その日から沈黙の時間が続いていた。 笑顔も会話すらも無い.. 食事の掻き込み 橋のパチッと当たる音 いつも以上に大音量に聞こえる虚無感 悪夢の時間が段々と心を蝕んでいく。 「ちょっといいか?」 珍しく光一からそれも真剣な表情で話しかけられた。 「う、うん いいけど」 いつもと違う違和感ある夫に戸惑いを隠しきれない優子 闇も深まり 裕二の鼾を確認し ゆっくりと薄暗い階段を駆け下り、光一と面と向かって顔を合わせる。 「何かあったの?」 「実はな.....」
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