ルーフトップ A

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ルーフトップ A

 僕はいつものように屋上で紫煙を漂わせていた。  風が無いため、いつまでも目の前で光と共に踊り続けている。  携帯灰皿に煙草をねじ込み、仕事に戻る。  僕は病室のドアを開け、椅子に腰を掛けると話しかけた。 「薫ちゃん、気分はどう? 気持ち悪くはない?」  声に気付き、薄っすらと眼を開き、囁くように答える。 「先生、お見舞いに来てくれたの?」  僕は頷き、彼女の小さな手を握る。 「そうだよ。ちゃんと約束を果たそうと待ってるんだよ」  彼女は少し微笑むが、まだいろいろと辛いようだ。 「そうだよね。こんどはイチゴミルクのみながらおほしさまみるの」 「覚えてるよ。いつもでも行けるように小銭を用意して待ってる」  僕は白衣のポケットに入れている小銭をチャリチャリと鳴らせ聞かせる。 「早く来れるようになると良いね。ちゃんと待ってるよ」  席を立ち、立ち去ろうとしている所に、背後から小さな小さな声で薫ちゃんが質問してきた。 「わたし、またほしみれるよね?」  聞こえない振りをしてドアを閉めた。嘘は言いたくないからね。  もう、僕に出来ることは神様にお願いすることぐらいだ。  ────◇────    数週間後、僕はイチゴミルクを片手に屋上に来ていた。  空はとても澄んでいて、たくさんの星たちが迎えてくれた。    空を見上げる。今晩もいつもと変わらず星は瞬き、美しさを奏でる。  僕はパックのイチゴミルクにストローを刺すと、地面に置いた。 「ほら、ぼくは嘘は付かないだろ?」  ひとりで語りながら、煙草に火を点ける。  紫煙と戯れながら、虚ろに眺める夜空。  なんだか、今日は特別に星が美しい。  「もう僕は泣かない。違うね。泣けないんだ」  小指を見ながら、ひとりで呟く 「神様、お願い聞いてくれなかったな……」  僕は置いてあったイチゴミルクを握り締めると、全力で空へと投げ捨てた。    飛び散ってゆく光景は、まるで流星群のように眩く光り、そしてすぐに消え去った。 どっちが本当の最後かは読み手の方に任せます →Bパターンへ。
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