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「とりあえず夕食を済ませてから、お父さんの部屋に乗り込むか。俺よりあっちの方がごねるぞ」
美波も笑ってる。
お母さんはダイニングで待ってくれていたから、美波が報告を済ませている。
俺からも礼を伝えて…今後の心づもりをさっと話して了承を取った。
これまで以上に、この先この家で強くなるのは女性陣だ。
…男の子だといいな。
咲子さんと久美子さん、美波に…娘となったら、自分の居場所がなくなりそうな気がしないこともない。院長と寂しく仕事ばっかりしてるのもちょっとな。
でも、生まれてみればどちらでもよくなるんだろう。
自分が子の親となるなんて、昔は想像したこともなかったけれど、美波との結婚を考え始めてからは…想像くらいはしたことがある。
それが現実になるんだったら、また順を追って段取りを進めていかなければ。
もうスーツのままで手だけ洗ってダイニングに直行する。
遅い時間になってしまったから、なるべく早く久美子さんの仕事を終えさせてあげたい。
俺の頭の中では、これからすることのロードマップがどんどんできていく。
美波との結婚を進めたときのように。
やることは山積みだ。
でも、その向こうに見えているのは新しい幸せのかたち。
俺は、結婚したいと思ったことはなかった。
ただ、美波と一緒に生きたいと願っただけ。
でも美波が俺の子を産むことを望んでくれた。
自分の人生の何年かをかけて。
だったら、俺は全力で自分の家族を守る。
美波と付き合って六年。出会ってからだとほぼ十年。
いろんなことがあったようで、そんなに長い時間を共にしていないような気もする。
でも、これからも俺たちの道は遠く離れることはない。
世間の平均とは違うかもしれないけど、俺たちらしく人生を共にしていければいいかなと思う。
今日も美味い夕食を最後までいただいて、俺は美波と一緒に『ごちそうさま』と手を合わせた。
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