プロローグ

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ちなみに俺の父も医者だが、祖父の医院を継ぐことはなかった。診療科も違うし、大学系列の大病院の勤務医だ。 元々俺は小学生の頃から、クラブチームの練習や試合で過ごす時間が長かったから、公立小中に通ってはいたけれど、近所の友達というのはあまりいない。 いや、でも友達がいない主な理由は、正確にはそれではない。 まず俺は、口下手と言うか…必要ない言葉を発するのがとても苦手だ。 学会発表とか、討論での発言なんかは普通にできるんだけど、日常的に特に意味もなく言葉を交わす、潤滑油のような会話をすることが昔からできない。 今でも、どちらかと言えば英語での発表のほうが気楽なくらいだ。 英語なら、ちょっとした間とか軽い呼びかけとかなしに、必要事項だけを事前に準備した通りに話せば済むから。 当然、小学生なんて一日中意味のないことを話し続けているんだから、それができない俺に友達ができるわけもない。 そして、俺の自宅近隣は似たような感じの家も多い、いわゆる高級住宅地が集まった地区だ。祖父も父も質素に暮らす人ではあったけど、仕事柄自宅に何人もの人を呼ぶこともあったから、それなりに大きな家を構えてた。 同じ地区に子供は少なくて、何年か上とか下にぽつぽつくらい。 そのうちの半分くらいは、小学校から…もしくは幼稚園から私立のエスカレーターに通ってたし。 そんな環境で、わざわざ遠くまで出かけて行って同級生と遊ぼうとは、思わなかった。校庭に集まってるメンバーとサッカーボールで遊びたいとはちょっと思わなかったし、誰かの家に集まってゲームをやってる集団にも混ざれなかった。
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