プロローグ

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中学生になっても人づきあいが下手だったから…自分のことをあまり話さないせいもあって、親友と呼べるような友人は…学校にもサッカー仲間にも、ほとんどいなかったな。それどころか、フルネームと顔をちゃんと覚えている元同級生なんて、一人もいないかもしれない。 でも高校生になって初めて、部の仲間といろいろ話せるようになった。 さすがにサッカーで全国常連と言われるチームに集まってきた者同士、分かり合えるところもあったし…何より、相手の家族への興味が高校生になると薄れてくるのがありがたかったな。 ただの個人として見てもらえる。 社交的じゃない奴だけど、話してみれば普通に付き合える、くらいの認識を持ってもらえたと思う。 俺が子供の頃に近所の友人を作れなかった理由は、自宅の環境や立地が、ちょっと普通とは違うことを自覚していたから、もあるかもしれない。 でも、特別な目で見ずに個人として付き合ってほしかったというか。今から思えば俺の方から壁を作ってしまっていたんだけど。 そもそも言葉が不自由なんだから、自分からどんどん入っていかないと、誘ってもらえなくて当たり前だよな。俺が歩み寄らなければ、相手の方が一線引いてしまうのは仕方なかったかもしれない。 だから、高校時代にできた仲間たちは、俺にとって初めての友人だったんだ。 その中でも一番話すことが多かったのが、米田(よねた)一登(かずと)。 こいつは中盤の選手だった俺と左右で組むことの多かった奴で、プライベートでも一番遠慮せずに話せる男だった。 大学を卒業した後は出版社に勤めてて、一年に一度や二度は必ず会うような関係が続いてるな。 俺が自分の家族のことを話したのは、多分米田が最初だったと思う。
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