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転身
高三のインハイでチームが全国優勝して、何人かはそのまま冬の選手権まで部に残ることを決めていた。
当時は、そういうのが普通にありだったんだ。
目立つところで活躍すればするほど、実業団チームに誘ってもらえる可能性だって増えてくるわけだから。
キャプテンとか役職は下の学年に下ろすけれど、三年でレギュラーポジションを取ってた奴はほとんど冬まで残ってた。
ちなみに俺の同級生から一人と、一学年上から一人、それぞれ大学と企業チームを経て今もプロで活躍している奴がいる。特に仲が良かったわけではないから、時々そいつらを囲んで語る会みたいなのが開催されてるみたいだけど、参加したりしたことはない。
新聞やテレビで試合結果が流れていて、名前が出ていたら、懐かしく思いながら見る程度だ。
俺は、三年の夏で引退を選んだ。
一応レギュラーの一角に食い込んでいた立場で引退するのは、かなりの少数派だったな。
米田に誘われて、部室の裏手で長く話し込んだのを今でも覚えてる。
俺が引退を監督に伝えたあと、監督が米谷『話をきいてやってくれ』って頼んだみたいだ。米田ははっきりそうとは言わなかったけど、でなきゃ俺は監督以外誰にも言わなかったんだから、米田が知るわけがないんだ。
「大塚、ちょっと」
と呼ばれて、練習後に部室裏の密談スペースに座り込んだ。
ちなみに人気のないその場所は、俺たちサッカー部員しか知らない格好の隠れ家だった。
別にいじめとかは全然なかったし、そういう危ない場所じゃなくて。
そして部内恋愛も禁止だったから、男女のそういうことに使うわけでもない。
下の学年の誰をスタメン候補に引き上げるかとか、あいつは怪我の治りがかなり遅れてるから申し訳ないけどベンチから外すかとか、そういう相談がここで行われる。
そして、本人への事前連絡も大体ここだ。
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