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プロローグ
俺が美波と出会ったのは、長かった学生時代の終わりごろだった。
俺は高校時代、全国常連レベルの私立高校でサッカー部に所属していた。
子どもの頃からクラブチームに入ってたんだけど、高校進学の時点で高校サッカーにシフトしたんだ。
それは、医者一家に生まれた一人息子という家庭環境に忖度したのもあったし、自分自身がプロ選手を目指すことに一生懸命になれなかったというのもある。サッカー選手である自分よりも、医者である自分の方がイメージしやすかったというか、好きになれそうだったというか、そんな感じ。
かなりの強豪校だったから、キャプテンとかエースとか、わかりやすい立場ではなかったけれど、一年の冬には何とかレギュラーに食い込んで、怪我をしていなければ大体スタメンに名を連ねる程度の選手だった。
在学中に夏冬合わせて四回、全国の地を踏んで…
仲間に恵まれたのもあって、十分に満足して高校を卒業した。
医者の三代目…ってことは、自分からは誰にも言ったことがなかったから、高校で知り合ったほとんどの奴は知らなかったはずだ。
俺の祖父は、自宅とは別の場所に整形外科医院を開院して、毎日車で通勤してた。まぁ、俺なら走っても10分くらいの近場なのに、どうして車で行くのか訳が分からんと思ってはいたけれど。
それがたまたま俺の出身高校の近くだったから、チームメイトもその病院の存在は知っていたし、言ってしまえばほとんどの奴が怪我のたびに通っていたんだけど。珍しい苗字ではないから、俺が言わなければ無関係を装えたというわけ。
祖父も、俺が家族だと進んで言いたがらないのを知ってたから、俺のチームメイトが通院しても俺のことを言ったりはしないでくれた。
別に、個人的に祖父を嫌っていたとかそういうわけではない。
むしろプライベートでは尊敬する祖父だし、関係はよかったと思う。
ただ、医者の息子とか孫とか、言われたくないと思ってた。
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