13人が本棚に入れています
本棚に追加
こうして保護者の許可ももらえたものの、だからといって意気揚々というわけにもいかず。
「ヨッシーは寝てればいいじゃん、アコがシてあげる。それとも逆? アコが寝てる間にヨッシーが……」
そういうプレイには興味はないっと断固としてお断りするとアコはきょとんとしていた。そういうところは相変わらずだが、そのうちアコもやたらと既成事実を作ろうとすることはなくなった。
月に一度はきちんとデートする、という約束を守ったのが良かったのかもしれないと由基は思っている。卑屈になることがあったアコも、由基が彼女を大事にしていることをわかってくれたようだった。
ふたりで映画にも行ったし水族館や遊園地にも引っ張り出された。親子連れが多い行楽地で自分と同じ年代らしい父親たちを見かければ、思うところはいろいろあったが、それもしだいに薄れていった。「よそはよそ、うちはうち」ということだ。気にしたところでなんにもならない。
遊ぶときには大いに楽しんでいたアコも、受験勉強にしっかり取り組んだようで、「ことちんと同じ大学に行きたい」という希望通り市内にキャンパスのある大学にきっちり合格したことは本当に偉いと思った。
「えへ。前は頭の中がヨッシーばっかだったけど、切り替えができるようになったみたい」
それは良かった、と褒めて褒めてと甘えてくるアコを心の底から褒めてやった。すると、由基の腕にしがみついていたアコが言ったのだ。
「じゃあ、ご褒美にシてくれる?」
そうくるかと凍りつきそうになったが、由基はかろうじて頭を回す。
「そ、それはまだ心の準備が……せめて、卒業式の後で……」
「わかった! じゃあ、卒業式の夜お泊りに来ていいんだね」
ぱっとアコは明るく簡単に言ったけれど。汚れたオトナなおっさんには、にわかにそのシチュエーションを受け入れていいのかが判断できない。普段仕事から帰ってきて寝るだけのそっけないこの部屋で、あんなことやこんなことをするのか。こんなに可愛いティーンの彼女と。
まったくもって別の方向にまたもや拗らせ始めた由基は、しかしかろうじて提案したのだ。
「せっかくだから、旅行に行こうか。一泊しかできないだろうけど」
「ほんと? 行く行く。アコ温泉がいいなー。ふたりでのんびりしたい」
ということで、花見シーズンとゴールデンウィークの隙間を狙い、のんびりと温泉旅行にでかけることになったのである。
最初のコメントを投稿しよう!