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誕生日会
「亜希、誕生日おめでとう!!」
「おめでとうございます! 亜希先輩!」
友美や結衣の声を皮切りに、後輩に次々と拍手を送られる。
完全に忘れていた。
今日は私の15際の誕生日だった。
「みんな、ありがとう」
人生初サプライズに、こんなありきたりの返答しか出来なかった。
正直泣きそうなほど嬉しい。
ずっとこの空間が続いたらいいのに……。
今日は一段と家に帰りたくないな…………。
「ただいまです……」
「おかえり、亜希。どうしたの? 今日は随分遅かったじゃないか。連絡もなかったし、お父さん心配したよ」
「ごめんなさい……」
あの後、ちょっとした誕生日会があった。日が長くなってきた6月とはいえ、もう完全に日が暮れていた。
「ごめんなさいじゃない! 何時だと思ってるんだ! このクズが!」
また殴られた。
怖い。 怖い。 怖い。怖い。
何度殴られても慣れることなどない。
毎日恐怖の連続。
家ではこの父親の機嫌をとることに全力を注いでいる。
ただでさえ、父は情緒が不安定な人だった。
4年前、母がなくなり、それに拍車がかかった。
さらに今年から兄が一人暮らしを始め、父と二人暮しになり、私は完全に父のストレス発散道具となった。
毎日が地獄。
部活では後輩たちから、家でもケーキ食べるんでしょ? と言われ胸が苦しくなった。
やっぱり普通の家庭は、家族の誕生日を祝うものなのか。
きっと父は、私の誕生日すらろくに覚えていないだろう。
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