ノリサン

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ノリサン

 著者は小学生の頃、複雑な家庭環境もあって愛情に飢えておりました。こう聞くと親からの虐待か?ネグレクトか?と勘ぐられもしますが、わたしは間違いなく両親に愛されており、もちろん虐待などもありませんでした。しかしその飢えは確実にわたしの心を蝕み、受験を控えたわたしの気持ちはいつしか『満たされない』という漠然とした不安と恐怖に囚われていきました。  わたしは両親との血の繋がりがありません(そのことは数年後に知ることになります。)が、血の繋がりと愛情の深さは関係ないと思っております。もう一度、何度でも言いますが、わたしは両親から、愛されておりました。しかし小学生のわたしはなにを思ったか家族に愛情を求めず、自分を満たしてくれる人を探すことをはじめました。子供とは純粋で、時には大人を苦しめるものです。  自分の容姿に少なからず自信があったわたしは、当時普及していたSNSに自撮りを投稿し、見知らぬ男性にちやほやされて承認欲求を満たしていました。今思えば小学生の女児が恥ずかしげもなくいやらしいポーズをとって自撮りをし、それに群がる男性に対して優越感を感じているという状況は異常としか言えませんが、当時のわたしはそうすることで『不特定多数の人に愛されている』という満足感を得ておりました。  小学校から帰り、私立のお嬢様学校に入るため受験勉強をして、母親が作ってくれるおいしいごはんを食べて、際どい写真を撮り、見知らぬ男性とやりとりをし、『愛されている』という実感を得る。まいにちがこの繰り返しでした。そうして過ごすうち、現在までのわたしの価値観を形成することになる、小学5年生の夏休みがやってきます。  夏休みの間、週に二回、バスで通っていた塾に夏季講習でほとんどまいにち通うようになりました。夏季講習には同じクラスの女の子も通っていたので、仲良くなってまいにちいっしょに通いました。その女の子は学校でいじめられていて、4月に転校してきたばかりのわたしはそのことを知りませんでしたが、彼女からクラスのいろいろなことを教えてもらいました。かわいい女子グループの杉本さんにいつもぶたれること、背の高い清水くんに筆箱を隠されたこと、普段はおとなしい田口さんに教科書を破られたこと。全部全部、わたしは知りませんでした。担任の大谷先生が、掃除の時間にたまにお尻を触ってくることも、知りませんでした。  わたしは塾から帰ると、予習と復習をして母親が作ったごはんを食べ、お風呂に入るまでの間SNSや匿名性のチャットルームで男性たちとやりとりを楽しみました。いま何してるの?というありふれた日常会話から、胸は何カップあるの?オナニーってしたことある?というちょっと際どい会話まで、特に緊張することもなく淡々とこなしました。その頃、SNSを始めて1年経ったあたりでしょうか。見知らぬ男性にSNSを見られ、かわいいと褒められ、性的な目で見られることに快感を覚え始めていました。
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