ベランダのあなたと私

結婚相談所

「同じように結婚を志す人たちの中で、心を通わせられる男性に出会えるのではないかと期待して入会に至った訳ですが……なかなか難しいですね」

「確かに。僕は３月に５回お見合いをしましたが、いずれも上手くいきませんでした」

「そうですか。ちなみに入会されたのはいつ頃で……」

私たちは、最初の気まずさが嘘のように色々な話をした。

数ある結婚相談所の中から何故ここを選んだか、街コンや婚活アプリを利用したことはあるのか。

小部屋の壁の薄さを気にも留めず、入会金や年会費の高さについても愚痴を言い合ってしまった。

私は会話に夢中で、ドアがノックされる音に気付かなかった。

「はい失礼しますね。お楽しみのところ誠にすみませんが、そろそろお時間です」

小部屋に入ってきたコーディネーターが告げると、川出さんが鞄を手に取りスッと立ち上がった。

その動作があまりに淡々としていて、少しくらい名残惜しそうにしてくれても良いのに、と思ってしまった自分がいた。

「では、ありがとうございました」

「あ、こちらこそ……ありがとうございました」

お見合い自体は楽しむことが出来たけれど、結局、婚活という本来の目的は達成できなかった。