ベランダのあなたと私

結婚相談所

「ここに会員登録している重元俊樹って男、会員資格を停止させてください。人としての品格に欠けるどころか、あまりに非常識です」

「非常識とは……何かあったのでしょうか？」

「前もお伝えしましたけど、あの人、SNSでお見合い相手を侮辱するような発言を投稿しているんです。しかもお相手の苗字や下の名前まで。私、その画面も見せましたよね？」

SNS上で婚活情報をリサーチしていたら、偶然見つけてしまったアカウント。

私が初めてのお見合いで出会った重元俊樹という男は、婚活で得た他人の仔細をSNS上に垂れ流していた。

苗字を明記するだけでも充分悪どいのに、下の名前も教えてしまった女性などはフルネームまで晒されていた。

ちなみに私も、お見合いのあったその日のうちに『今日の吉田って女、趣味なしアピールポイントなしで話広がらない。害悪コミュ障でハズレ。ただのこけし』と書かれていた。こけしって何だよ。

「規約にありますよね。第３条第７項と第１２条２項で、お見合い相手の人格尊重責務と規約違反者の会員資格停止」

「でも……」

スタッフの煮え切らない姿勢に、私の頭の中でプツッと糸が切れた。

「あなた方は、他人の情報を勝手にネットへ晒すような男を野放しにしているってことですよね。なら私も、ネットの口コミに書き込んで注意喚起しておきましょうか。この結婚相談所では、悪質な会員によって個人の情報を公にされかねないと」

「そんな……」

私はスマートフォンを取り出してSNSアプリを立ち上げた。フリック入力を駆使して、とある文章を作り上げていく。