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「私がこのような口コミをすれば、営業妨害だと訴えますか。重元俊樹の行為が規約違反じゃないなら、あなた方は私の行為をどう咎めます?」
これで準備は整った。私は作りたての文面を投稿すると、アプリを閉じた。
「あなた方が何もしないのなら、私がやります」
それだけ言い残して私は相談所を出た。
チンピラみたいな脅し方をしてしまったことは後で反省しよう。
川出さんは同じ場所で、言われた通りに男を見張っていた。
「変化ありません、ずっとあの調子で電話しています。でも吉田さんは何を」
「どうもありがとう、助かりました」
私は川出さんの横を通り過ぎて、男によく聞こえるよう大声で呼び掛けた。
「こんにちは!」
重元俊樹は肩をビクッと揺らしたが、私に気づくと警戒を解いた。
「ああ、この前の……ちょっとまた後で電話するわ!」
重元は電話相手に断って、スマートフォンをヒップポケットに収めた。
「前に見合いで話したよな。名前何て言ったっけ」
「こけししか思い出せないですか?わざわざ私の苗字をSNSにまで載せてくれたのに、『シゲキックス』さん」
SNSのユーザーネームで呼んでみせると、男は目を見開いた後、不快そうに顔をしかめた。
「お前、何で俺のアカウント知ってんだよ」
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