結婚相談所

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「私の方でQRコードを出します」 「では僕が読み込みます」 川出さんがサクサクと自身のスマートフォンを操作してスキャン画面を表示させた。QRコードが読み取られ、私のユーザーアカウントが川出さんのアプリに送られる。 「吉田菫さん。綺麗な名前ですね」 「ありがとうございます」 話している間に、見知らぬアカウントからスタンプが送られる。アイコンは青空と雲の写真で、ユーザー名は『川出』だった。 私は下の名前まで晒したのに、なんか狡い。 「川出さん、下のお名前は?」 「失礼しました、川出恭平と申します。恭しい平と書きます」 恭しい平の川出さん、と記憶に刻み込ませるように、心の中で名を呟く。 「今日はありがとうございました。また機会があれば、お会いしましょう」 「ええ、ではまた」 裏路地でそう交わしてから数時間後、『また』は案外早くやって来そうだと分かった。 “本日結婚相談所でお会いした川出です。また吉田さんとお話が出来ればと思い連絡差し上げました。よろしければ、ご都合の良い日を教えていただけませんか?”
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