お隣さん

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ソワソワと落ち着かない気持ちで、信号が青になるのを待つ。 メッセージの文面からして、川出さんは既に到着していそうだ。何て声を掛けよう、お見合いの時みたいにうまく話せるだろうか。 信号がパッと青に変わるのと同時に足を踏み出す。横断歩道を渡り、カフェまでの最後の十数メートルは小走りだった。 出入口の自動ドアの側に、スーツ姿の川出さんが立っていた。向こうも私に気付いたのか、ひとたび目が合うとずっと逸らされない。 一回しか会ったことのない人だ、雑踏の中でも見分けがついたことに内心ほっとした。 「こんにちは。お久し振りです」 「どうも、こちらまで来ていただいてすみません」 川出さんは入口に置かれたメニューボードを指差した。 「どれにします?」 「あ、私はロイヤルミルクティーにしようかと」 「分かりました。俺が注文しておくので、吉田さんは先に席を取っておいてください」 それだけ言って、川出さんはスタスタと店内の注文カウンターへ歩き去っていった。 ポツンと残され、ひとり途方に暮れる。 これは、私に払わせまいとしてくれているのだろうか。いかんせん川出さんの意図が分からない。
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