お隣さん

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そういえば、前にお見合いで言っていた『前に進まなければならない』も何やら事情がありそうだった。 「その点、他人に恋愛感情を持ったことがないと仰っていた吉田さんとなら、安定した距離感を保てそうだと感じました」 「……そこまでして結婚がしたいのですか?」 「はい、今の僕にとっては結婚が最重要です」 川出さんはあっさり肯定した。 両親を安心させたい、家政婦代わりのパートナーが欲しい、出世のために結婚が不可欠。様々な可能性が思い浮かぶが、どれも今分かっている川出さんの人柄と並べると、ちぐはぐでアンバランスだ。 そもそも、“まずはお友達から”の関係はつい先日始まったばかりじゃないか。勇み足というか、過程をすっ飛ばしすぎている。 色々な考えがぐるぐると頭の中を回り、目眩がしそうだった。 「……ちょっと、今日のところはここまでにして、じっくり考えてみても良いですか?正直まだ状況を理解できていなくて」 私が提案すると、川出さんはあっさりと頷いた。 「当然です。とりあえずは、僕からの告白があったことだけ覚えておいていただければ」 話はまとまった。私たちは無言でドリンクを飲む。 悪ふざけにしてはスケールが壮大な話だし、川出さんは至って真面目な無表情だ。これでもし結婚詐欺師だとしたら、プロの俳優になれる。
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