258人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
コーディネーターが小部屋を後にしたことで、いよいよ二人きりになる。
私は男性へ、あらかじめプリントアウトされた紙を差し出した。お見合い時の会話における命綱だ。
「私のプロフィールシートです。お願いします」
「では、僕からも」
男性からも、私が書いたのと同じ作りのシートをもらう。
氏名・ニックネーム欄には『川出』と苗字らしきものが書かれていた。
さて、何から話そうか。
「川出さん、特技はテニスなんですね」
「ええ、まあ……」
「ずっとされていたんですか?」
「そんな感じです」
開始前にコーディネーターが言っていた『知的で思慮深い』は、無口を仄めかしていたのだろうか。
プロフィールシートを読み進めて、会話の糸口を探す。
性格は控え目――よく分かります。
好みのタイプは一緒にいて楽しい人――現状、まず私は違うだろう。
相性のせいなのか相手側の気が乗ってないのか、驚くほど会話が弾まない。
最初のコメントを投稿しよう!