ベランダのあなたと私

結婚相談所

「私、他人にあまり興味がないんです」

一度話し始めると、ついベラベラと喋ってしまう。

「家族愛や友人への親愛は理解できます。でも、恋愛だけは分からないんです。職場の男性は、あくまで『職場で共に仕事をする人』でしかなくて、恋愛対象には入り得ない。そんな浮わついた気持ちで仕事をしていたら足元を掬われると思っています。趣味仲間や学生時代の友達も、恋愛への発展方法が分からないと言いますか、友人の枠を越えることはないんです」

「そうですか。吉田さんは真面目で実直なんですね」

川出さんは神妙に頷く。

真面目と評価されるべきところなのか、私は肩を竦めた。

「どうでしょうか、単に人として大事なものが欠けているだけかもしれません。誰かを好きになる心の仕組みって何なのだろうと、いつも不思議に思っています」

「恋に落ちるのにコツや法則性がある訳でもないですし、理屈で説明できる現象なのだとすれば結婚相談所が存在する必要はないですよね」