噂される祟り

12/12
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
一週間後、友絆は水都の家の前で待っていた。 仲のよかった水都であるが、この一週間ほとんど会ってはいない。 それは気まずいからとかそういう感情の問題ではなく、単純に現実的な問題のせいだ。  久しぶりにも思える水都が外へ出てくるのを見て駆け寄っていく。 不安そうな表情も友絆の顔を見た瞬間、花が開くように明るくなっていた。 「水都! おはよ」 「友絆・・・! おはよ、迎えに来てくれたんだ」 「高校初日は学校に行きにくいだろうと思って」 水都は友絆たちと同じ高校へ入ることができた。 だが水都は今から高校一年生。 流石に同じ学年にはなれなかった。  ただ四年間の遅れを取り戻すため必死で勉強した努力は、大したものだと友絆は思っている。 「確かに自分よりも年下の子たちと勉強って、気まずいんだよなぁ・・・」 「大丈夫。 休み時間は様子を見に行ってやるよ」 「ありがとう」 「そう言えば、検査はどうだった?」 この一週間高校の進学先だけを決めていたわけではない。 四年間の事情聴取や、身体の健康に異常はないか病院等をずっと巡っていたのだ。  更に他の行方不明者や自殺者についての事情聴取もあったらしい。 もちろん水都が直接関与したわけでもないし、すぐに解放されたらしいのだが。 「うん、異常はなしだったよ」 「そっか。 あ、でも、森のことは流石に聞かれたんだよな? 森の神のことは言った?」 それは非現実的なこと過ぎるため小声で尋ねる。 「言うわけがないじゃん! というか言えないよ」 「はは、そうだよな」 森の神、そして森の真実は二人だけの秘密にしておいた。 有純も森の神の存在は知っているが、真実までは知らないため大事にはならないだろう。  ただ今後森で行方不明者などが出ないようにだけはしてもらうことにした。 今やあの森は全面立ち入り禁止で簡単には入ることができない。  寧ろもっと早くそうするべきだったのかもしれないが、もしそうだとしたら今頃水都はここにはいなかったはずだ。 「そう言えば、森から帰った後、久しぶりにお米を食べたんだ。 温かくて美味しかった」 「あ、そうだよ! この四年間、どうやって生きてきたんだ?」 「森って案外食べ物の宝庫なんだ。 綺麗な湧き水や美味しい果実もある。 それらで生きてきた」 「へぇ・・・」 想像してみるが、自分にはできそうにない。 そんな表情を見たのか水都が可笑しそうに笑った。 「って、そんなわけないでしょ。 いくらなんでも森で四年間暮らすとか不可能だから。 この前は行くことはなかったけど、捨てられたボロのロッジみたいなところがあってね。  そこで寝泊まりしていたんだよ。 それに食べ物は森の神を鎮める貢物なのか知らないけど、かなりの量のお供え物が来ていたんだよね」 「なるほど。 お供え物を食べていたっていうわけか。 そりゃあ備えた側からしてみれば、マジで森の神がいたと思っていたのかもしれないな」 「腐らせるなんて勿体ないじゃん?」 「・・・まぁな。 案外快適な生活を送っていたんだな」 「友絆もそんな生活してみたい?」 「いや、無理無理。 結局は森を歩き回ることになるし、いずれ遭難してしまうって」 「僕は森の神だから、森のことは何でも知っているよ。 遭難はさせないから任せて」 「じゃあ、その時が来たらお願いするよ」 話しながら歩いていると同じグループの四人と会った。 水都は久しぶりに会うその面々を見て何となく気恥ずかしそうだ。 岩太「よ、水都」 水都「みんな・・・! どうしてここへ? 学校で合流するはずじゃ」 有純「そんなの待てるわけがないよ」 細雪「待ってたよ、水都くん」 岩太「水都、お前痩せたんじゃねぇの?」 姫依「おかえり、水都。 戻ってきてくれてよかった」 水都「ッ、みんな・・・! ありがとう!」 細雪「さぁ、一緒に行こう」 六人は昔のように仲よく登校する。 本当はこれが当たり前だったのに、一人、また一人とメンバーが減り最近は一人で登校していたことを友絆は思い出していた。 やはり仲間が一緒にいるのはいい。  全員とこのままずっと仲よくやっていけるのが一番いいと思っていた。 ―――そう言えば、この一週間で決めたことがあるんだよな・・・。 そう思い二人を呼び止めた。 「有純! 姫依! 話したいことがあるんだ」 有純は察したのか小さく笑って頷いた。 「三人は先に行ってて!」 「了解ー」 岩太の返事を合図に離れていくのを見て姫依が尋ねる。 「それで、話って?」 「うん。 ・・・あのさ、俺、二人の気持ちには応えられない。 ごめん」 友絆は元々二人に好意を寄せていない。 だけど水都は有純のことがまだ好きなため、恋事情を放っておくわけにもいかなかったのだ。 だからけじめをつけようと今ここで答えた。 有純「そっか。 残念だな」 姫依「・・・いつアタシの気持ちに気付いたのかは分からないけど、分かったよ」 「本当にごめん。 でも、これからも仲よくしてくれると嬉しい」 有純「当たり前じゃん。 ほら、三人に追い付こう!」 そう言って三人は駆けていき、仲よしグループは改めて未来への道のりを進み出したのだ。                                                                  -END-
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!