噂される祟り

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四年前、水都が行方不明になる一日前に友絆は水都と会っていたのだ。 日曜日の出来事で、家でゴロゴロしながらテレビを見ている時に水都から連絡がくる。 『今、出てこれる?』 ―――水都からの誘いなんて珍しいな。 ―――一体何だろう? そう思いながら『大丈夫だよ』と返信した。 それから場所を指定されたためそこへ向かう。 「よッ、水都。 呼んだのは俺だけ?」 その言葉に水都は神妙な面持ちで頷いた。 普段とは明らかに様子が違った。 友絆もそれをすぐに察し、真面目に聞くモードへと切り替える。 「どうした?」 水都は目を泳がせながらこう聞き返してきた。 「・・・どうして友絆は、僕のことを助けてくれなかったの?」 「え、何のこと?」 「昨日、僕がいじめられているところを見たでしょ?」 予想もしていなかった言葉に大きな声が出てしまう。 「は!? 見てないよ! 水都がいじめられているところを発見したら、助けるに決まってんじゃんか!」 誤魔化しているわけではなく、本当に心当たりがなかった。 「じゃあ昨日の夕方、友絆はどこにいた?」 「え・・・」 ただ内容も内容だが、あまりに神妙な面持ちに曖昧な記憶を引っ張り上げる。 「おそらく、母さんに買い出しを頼まれてスーパーへ行っていたと思うけど」 「その時、僕が通っている栄光塾の前を通った?」 「・・・通った」 「ほら! やっぱりあれは友絆だったじゃん!」 強めに言われたその言葉に反論する。 「いや、ちょっと待てって! 一体誰にやられたんだよ? 何なら今からでも、ソイツに仕返しに行くぞ」 「僕と同じ塾に通っている、他の学校の男子だよ。 だからきっと友絆は知らない」 水都がいじめられていただなんて知らなかった。 そのようなことが自分の生活の中で起きていたなんて全く気付かなかった。 言われた場所と時刻は確かに友絆はそこにいたことを憶えている。 だから水都が言う『友絆を見た』というのは本当なのだろう。 だが友絆から水都を見ていないというのも真実だ。 「いや、本当に気が付かなかったんだ。 栄光塾のどこでいじめられていたんだよ?」 「塾のすぐ横だよ。 建物と建物の狭い隙間。 僕たち、そこで目が合ったよね?」 「いや、そんな記憶は・・・。 ごめん・・・」 本当に憶えがないため謝ることしかできない。 すると水都は溜め息をついた。 「それにさ、友絆は僕の大切なものも奪ったでしょ?」 「大切なもの?」 『それって何?』と聞こうとしたのだがその隙を水都は与えてはくれなかった。 「酷いよ、友絆。 友達だと思っていたのに」 そう言うと水都は涙を浮かべながら背中を向けて去っていった。 突然のことに混乱してしまい追いかけることもできなかった。 目が合ったという憶えもないし、水都から何かを奪った心当たりもない。  だが友絆はまた話せば分かると思っていた。 全てがただの勘違いなのだから分かり合える日がくると思っていた。 これが水都との最後の会話になるだなんて考えてもみなかったのだ。  翌日の月曜日水都は学校へ姿を現さなかった。 「先生! 今日、水都は?」 開口一番に誤解を解こうと思っていただけに、姿を見せないことに焦りを憶えた。 担任に聞こうとしたところ、妙に焦っていたのを憶えている。 「あぁ、それが水都くんの家にも連絡を入れたんだが、朝はいつも通り学校へ行ったって・・・」 「じゃあ水都は今どこに?」 「分からないんだ。 何かあったとすれば、通学路の途中だろう」 「俺、捜しに行ってきます!」 「よしなさい。 警察には既に捜索依頼を出している。 だから友絆くんは、授業にちゃんと集中すること。 いいね?」 「でも・・・」 そう言われた。 だが結局、水都は見つからなかった。 ―――水都がいなくなったのは、俺のせい・・・だよな。 責任を感じ放課後は自分も捜したが見つからなかった。 この過去が友絆は忘れられずにいた。 このことは仲のいい他の四人にも話していないことだ。
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