次の電話で

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『雄太が産まれたあと、私、ものすごいストレスでさ、頭、おかしくなりそうだったの。とにかくあの家から出たかった』 よくある嫁姑問題というところか。 「でも二世帯にするって言ってたじゃん?」 『あの話はなくなった、というか最初からそのつもりはなかったみたい』 「まぁ、まだ新しい家だったもんね」 『それもあるけど…』 「けど?」 『1番はお金がかかるってことだよね?できれば完全同居の方が安価でしょ?』 「ま、そりゃそうだ」 由美にとっては、騙されたようなものか? 『そもそもさぁ、家を建て替えるからって結婚式もしなかったんだよ、無駄なお金は使わないとかでさ。最初はそれに納得してたけど。結局、家具とかは全部私の貯金から出したし、出産費用とかもね。それでお金がなくなっちゃった』 「そうだったんだ…。それがストレス?」 『それだけじゃないけど、まぁ、私の精神状態が危ないと察知してくれたのがお父さん、つまりお舅さんだった』 昔、一度だけ会ったお舅さんを思い出した。優しそうな穏やかな人だなという印象だったことを思い出した。 『涼子にお金を借りて、これでいつでも実家に帰れるって少し気が楽になって。雄太もいるから、もう少し頑張ってみようかなって。でもダメで。 弱りきってたところにお父さんが優しくしてくれてさ…』 「まぁ、それはわかるけど」 『慰めてあげるからってホテルに誘われた』 「え?どうやって?雄太は?」 『雄太は連れて行ったよ、置いていけないじゃん?』 私は想像した。 生後半年の雄太を連れて、お舅さんとホテルに入る…!!! 「ごめん、それ、わからないわ」 『涼子にはわからないよ、涼子はいつも幸せそうだもんね』 「いや、そんなことないし。そこそこ人並みにはトラブルもあってストレスも溜まるし。だけど…」 『だけど、そんなことにはならない?だよね!涼子はいつも正しいから。でもね、その時の私は誰かに優しくされたかった、甘えたかった、それだけだった…』 「で、どうだったの?優しくされてうれしかったの?」 少し意地悪く聞いてみた。 『あんな風に優しく抱かれたのは初めてだった、エクスタシーっていうの?あれ、絶頂?初めてだった』 私は正直いって、気持ち悪いと思ってしまった。 その場にいたという雄太が、何も分かっていなくてよかったと思った。 「で、一回で、妊娠したってこと?」 『ううん、何回か、わからない』 思わず、うげっと言ってしまう。 「いつも雄太と?」 『仕方ないでしょ?』 「いや、ちょっとおかしくない?」 『まぁ、そうだよね。とにかくその間は私は幸せだったの。でも、妊娠したことがわかって焦った。旦那の可能性はとても低かったから』 なんてこと。
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