それぞれの色

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 秋晴れが続いている。朝起きて散歩をしていると、遠くの山に虹がかかっていた。靄にかすみ朝日に照らされている虹を見ながら、あることを思いだした。  もう一年以上前だろうか、テレビで見かけた高校生。その高校生は「かわいすぎる男子高校生」として有名になった。  彼(ここではそう呼ばせていただく)を初めて見た時、自分の中に衝撃が走ったことをよく覚えている。なぜなら何度見たところで正真正銘の少女にしか見えなかったからだ。  「自分の恋愛対象はまだ分かりません。」彼の言葉を当時のぼくは理解できなかった。その番組で彼は、自分の容姿と社会的な価値観の衝突という苦悩を語っていた。「男は男らしく」スローガンのように使い古された価値観が彼を追いこんでいた。そんな彼の一番の理解者は母親だったと言う。それまでは短く切っていた髪を伸ばし、やりたかったメイクも学んだということだった。  当時ぼくは考えた。もしぼくが彼と同じクラスにいたとしたらどんな反応をしただろうか。彼のことを受け入れただろうか。違うというだけでいじめていただろうか。想像すらできなかった。  自分がカナダにいた頃、バイトをしていたカフェに一人の男性が来た。何度か会った後、ぼくと彼は遊びに行くことになった。(カナダでは店員と客が友達になることは往々にしてある)そしてその日の帰り路、ぼくは彼に告白された。ぼくは”No”と言った。そして彼は友達でい続けて欲しといった。ぼくは”Yes”と言った。ぼくたちは友達になった。一緒に遊んだり、飲んだりした。疑いなくぼくたちは友達だった。彼がゲイでぼくがストレートであるということを考えたことはなかった。ただ彼はぼくの友達だった。  虹が虹色であるように、紅葉深まる山にも真緑色の葉が生い茂っているように。それでいいと思った。
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