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暖かい風が心地いい季節。
自転車に乗ってペダルを漕いでいた私。
桜並木ところまで自転車を走らせていた。
途中で自転車を止め、桜に吸い込まれるように近づいていく。
すると、桜の木の下には、人がいた。
男の人だった。
この時の私はまだ知らなかった。
その男の人は、黄昏ているように見えた。
「…あの…」
思わず、口が動く。
あっ!と口元を隠すが、その男の人は、振り向かない。
振り向こうともしない様子で何も言わない。
「…」
静かな時間が流れ、すぐ近くの川の水がキラキラとしている。
桜の花びらが風と共に降ってくる。
私も黄昏始めていた。
桜の花びらが風でキラキラとしているところに浮かぶ様子がまたいい。
「いい感じだよな」
「え?」
「いい場所だなと思って」
「…そうですね」
満足したかのように、彼は立ち上がる。
「じゃあ」
そう言い、その男の人は、その場から消えて行った。
まるで、桜のように。
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