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温かい霧の中を橙色の電車が駆け抜ける。
いつもどおり、朝の車内は混んでいた。
「えー、死んだらつまんないじゃん。おもちゃだってないんだしさ」
どういう脈絡なのか、さっきまで向こうで騒いでいた小学生の声が聞こえた。
つまんない、か。
一時代前は『詰まらないから死ぬ』というフレーズが流行していたんだとか。
つまらないのか、そうじゃないか。
案外生きる基準なんて単純なものらしい。
駅に停車して車両のドアが開き、小学生達がわらわらと飛び出していく。
私は静かに目を閉じた。
神様、お願いです。
あの子達の生きる未来が、楽しいことで溢れますように。
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