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カーテンの隙間からは暖かな朝の木漏れ日が差し込み、朗らかに歌う小鳥の囀りまでもが聞こえてくる始末ではあるが、それらも私を起こすには至らない。
早起きは三文の徳である、朝はすっきりと目覚めるべきである、という主張は数知れず、対して起きなくても良しとする主張はないだろう。
しかし、私は考える。
マズローの学説こそが朝に起きなくても良しとする後盾になるのではないだろうか。
そこまで考えて、ふっと私は布団の中で笑った。
それは違うな、私は私の浅はかな考えを否定する。
マズローの学説には「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物である」という原理が根底にある。それであれば、睡眠欲が満たされない限りは動ける気がしない、という私の状況はただ私の人間としてあるべき姿の否定に他ならない。怠惰の象徴である。
そこまで考えて、私は再び笑みを溢す。
違うだろ。
そうだ、私は今、闘争の最中にいるのだ。
何と闘っているのかって?
それは勿論、マズローの学説を含めた、社会の起きろという漫然たる圧力とだ。
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