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その2
その2
バグジー
「…この地のことは、千葉に滞在していた時に聞いてな。なんでも大昔から情念の強い女が猛って、女同士、喧々諤々のぶつかり合いが絶えない風土を持つ土地柄だとか…。それで、ここの神社の言い伝えもな…。この地での”仕事”を済ませたら、是非、ここで心を解放してみたかったんだ」
「まあ、今じゃあ、ここは全国から悲願成就を願う女が、お参りに来るスポットではあるけどね…。でも、どうもさ…、他の女から男を奪えるとか、憎い恋敵を不幸にさせられるとか…、”そっち系”だけが独り歩きしちゃってさ。地元で生まれ育った女たちからしたら、あのねえ、ちょっとねえってとこだよ」
「お前もそうなのか?」
「うーん、私は別にどうでもってね。ただ、そんな願い、叶うわけねーよってとこだ。私は小さい頃から、ここにはずいぶん来てるけど、なにかの願いを念じたことはないね」
「じゃあ、何しにくるんだ?」
「…アンタさあ、ぶっきらぼうでそのなんにも考えてないような訊き方、いいねえ。お前、やる気あんの?ってとこでしょ。まあ、私はバグちゃんが感性も頭も鋭いの知ってるから、いいのよ、それで…(笑)」
コイツ…、嫌味と憎まれ口は天才だな
...
「…あのね、ここには会話しに来るんだよ。私にとっては、そうだな…、教会の懺悔室みたいなもんかな。もっとも、懺悔なんかはしてないな、私は」
神父さん、それなら来るなってなるだろーがと言えば、コイツの返す言葉は想像がつくからやめとく…
「…最初に会った時に言ったと思うけど、自分の奥、深い中にいるもう一人の”主”ね…、こいつを挑発して私は日々、生きてるんだ。それは真剣勝負だよ。だから、その結果の行動に対しては、後悔なんかないわな。人を傷つけたり、迷惑を掛けたりは年中だけど、衝動や欲得に駆られてではないからさ。…神さんには、こんなだったわ、どうっすかねって。まあ、こんな感じだわね」
「ふう…、口にするコメントが見当たらん…」
麻衣はキャハキャハ笑って、足をばたつかせてるわ
まったく、ブッ飛んでやがる
...
これじゃあ、周りからはイカレてるとしか見られんな
「おたくなら、他の連中よりはわかるだろうと思うけどな。己の中の女とは、なあなあじゃないんだろ?」
「ああ、お前と一緒だ。真剣を向け合っている」
「…確認するけど、あくまで”を”と”け”ね?」
「そうだ…。”に”と”き”じゃない」
「おおー!いいねえ。…じゃあ、私以上じゃん」
まあ、そういうことにはなるか…
...
コイツ、この神聖な場所で、私に漫才をさせる気か?
「…麻衣、お前には告白しておくぞ。…実は私の中の女、男以上に凶暴なんだ。”そいつ”と真剣に接すれば、猛りを抑えることが困難になってな。普通の性同一性障害とは違うんだ。砂垣にも言ったが…」
「ハハハ…、砂ちゃん、仰け反ってたんじゃないのか…。でもまあ、そんなら、バグちゃんがこの都県境に導かれたのも納得だわ。でさあ、ここのやんちゃな女ども、どうよ?実際…」
「最高に美しい」
「キャハハハ…。そういうことね。されば、猛る女たちをしょぼんとさせないために、一肌脱ぐって…。まあ、そんなとこか?」
「ああ、その解釈でいい」
「…まあ、アンタが付いてくれりゃ、こっちも心強いんで…。今回の相手は普通の感覚でやりあったんじゃ、止められない。それをアンタはよく理解してくれてるようだしね。ひとつ、仲良く頼むよ。小憎らしいガキだけどさ」
「こっちこそ、そっけない変わりもんだが、よろしくだ。では、当面のところを打合せ願おうか…」
麻衣はいたずらっぽい薄笑いを浮かべて「はいよ!」と威勢よく答えた
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