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その3
その3
バグジー
逆髪神社では、麻衣からもいろいろと尋ねられた
まだ見ぬ敵、大打ノボルについては、麻衣も戸惑いを抱いていたようだしな
私が接し知りえている限りは、そのまま告げた
さらに麻衣は、私との出会いにも何か感ずるものがあったようで、雇われとしてこの地にやってきた経緯を聞きたいようだった
「へえー、大打とはそういう”なれそめ”でね…。じゃあ、アンタが都県境に流れ着いたのも、あの野郎の関与があったのか?」
「まあな。私がこの地に興味を抱いてることは、ヤツも知っていたからな」
そう…、今回ここへやって来るきっかけは、紛れもなく大打のオファーがあったからだ
…
今年の春、私は少刑からの出所を間近かに控えていた
そんなある日、大打が面会に訪れたんだ
「…おお、やっと会えたな。まあ、元気そうでなによりだ」
「アンタがここへ来るとはな。何の用なんだ」
「おい、おい…、いきなりご挨拶じゃねえか、バグジー。何度も面会申請を却下されて、やっと来れたんだぜ。もう少し、愛想よく頼めないもんかな」
「…用件聞いて、それでだ。はっきり言って、アンタは最も嫌いなタイプの人間なんだ。初対面の時も言ったと思うが…」
「ああ、覚えてるよ。だが、今日はお前にとっては朗報だと思うがな。まあ、聞く耳持たねえってんなら、このまま帰るぜ」
なに…?
...
「…今の俺の立場で、朗報と聞いたら追い返すわけねーだろ。気分を害して悪かった。とにかく用件を聞こう」
「よし。端的に言うぜ。時間も限られてるからな。…お前、俺のフランチャイズ、興味あると言ってたな?」
「都県境のあそこか?」
「そうだ。お前の腕を見込んで、請負いの口がある。潰してもらいたいのは女なんだ。最もそこらの男じゃ、とても手に負えないモーレツ・ギャルちゃん連中だわ。お前は女だろうが、情け容赦ないってことだからな。そういうタフな男を探してるそうだ」
まさに朗報だったな
...
「雇い主はお前じゃないのか?」
「金を払うのは星流会になる。関東直系の二次だよ。お前が都県境に惹かれるのは、要は猛る女たちがお目当てなんだろう?その愛しいギャルどもと、がっぷり四つに組み合えるチャンスって訳だ」
条件は良かったし、何しろ”そこ”へ行って、そこの女とぶつかれるのは、まさに願っても無い話だった
だが、私は即答を避けた
大打という男の真意が図れなかったからだ
この時点で、私は大打が関東の広域組織直系と何やら、不穏な計略を描いていることを薄々知っていたんでな
まずはここを出て、仲間の情報を得てからだ
この男もそれは承知のようで、無理に即答を迫らなかったわ
「まあ、返事は今月末にココを出てからでいい。ゆっくり考えな。とりあえず、”卒業式”を済ませたら連絡くれ」
そして桜満開の風が強い日、私は”卒業式”を無事終えた
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