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その4
その4
バグジー
予定通り”塀の外”に出た後、各地の仲間から情報を取った結果、大打は東龍会との相乗りで、都県境のガキ社会に食い込む準備を進めていることを知った
ガキ社会に長く関与していた星流会を前面に出し、ガキ同士に戦争させ、縄張りで利害関係を有する相和会を切り崩す糸口を探っているようだと…
その星流会が後押しする砂垣グループに用心棒として付き、対決相手の猛女軍団を迎え撃つというのが私の役目らしかった
そこで私は、星流会会長の諸星と会い、”請負い”に際する具体的な条件を提示した
それは二つあった
...
まず、金は星流会から受け取るが、女たちと自分の戦うポジションはあくまで砂垣グループの立場にしてもらい、その際、星流会は両者間の戦い方に一切の詮索をしない
もうひとつは、仕事が終わった後の関係は完全に絶ち、以後、私の挙動には一切干渉しない
「ほう…、なかなかビシッとした条件を突き付けたもんだね。私がアンタにわざわざ”注文”付けなくても、その意思があったのか。…それで、諸星の顔デカ、その条件を飲んだんだな?」
麻衣はニヤニヤしながら聞いてきたわ
「そうだ。予想外にあっさりとだったな。今から考えれば、諸星は砂垣とのタッグは解消するつもりだったんだろう。だから、”結果”はどうでもよかった。”その先”は”親会社”が敷いたレールに乗って走ることを受け入れていたから、所詮、砂垣と女の決着はアリバイつくりのようなもんだったとな。それは承知していたと思う」
麻衣は黙って聞いていたが、いろいろ思うところがあったようだ…
...
「…あのさぁ、そもそもバグっちは、ここの猛る娘をどうやって知ったの?」
コイツはこのあたりを盛んに突っ込んできたわ
「…去年の夏前だったかな。千葉のカクテルバーでバイトしていたんだが、そこのマスターに力を貸してくれって頼まれてな」
マスターは、妹の後輩達が少女だけでチームを結成したところ、地元の暴走族からクレームが入り、この店で話し合いの場を持つので立会って欲しいと
要するに、女だけだと相手も舐めて強圧的な態度に出るだろうから、もし力づくを仕掛けてきた場合、助けになってやってくれという意味合いだった
ところが、チームのその子からは、最初は自分達女だけで話し合うということだった
で…、店の客を装ってカウンターで控えててもらいたいと言われた
なんでも、その子のチームの後見役だった、埼玉南部のレディースの代表が同席してくれるからと…
...
「えー!それってもしかして…」
「うん、南玉連合ってことだったな」
「その時だと…、荒子さんが総長になった前後か…」
「あのな、当日は南玉のトップ連中が取り込んでて、来れなかったんだ。そこで”代理”の女がな…」
私自身も当日コトが済んだ後に聞いた”その女”の名前を言ったら、麻衣のヤツ、仰天していたぞ
...
その場には相手方の男は3人、こっちはチームの子二人と南玉の代理人の女、合わせて計6人が席に着いた
私は、話の中身が聞こえる位置のカウンター席に座り、待機していたんだ
話し合いの内容は単純明快だったな
勝手に女だけのチームを作って、認められん、解散せよときて、それはできない、ならば、こっちの傘下に入ってもらうと要求だ
だが、少女たちはあくまで誰からの干渉も得ず、女だけで独立自尊でやって行く、これは絶対に譲れないと主張していた
まあ、完全に平行線だったな
...
それで、どうしてもというなら、力を以って決着をという流れになった
さあ、ここで出番かと立ち上がろうとした寸前、チームの子がマスターを通じて伝言だ
自分達でやれるところまでやるから、まだここにいてくれと…
結局、このあと私の出番はなかった
女だけで決着をつけちまったんだ
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