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その1
その1
バグジー
これほどまでに女が躍動し、何ものにもとらわれず疾走できる、東京埼玉県境
この地に培われた土壌…
その奇跡の地が今、”奴ら”に汚さようとしている
そのことに”みんな”も気づき、危機感を共有して、”奴ら”を迎え撃つ決意を持ってくれた
だが…、”あの敵”を阻止するには、彼女たちと砂垣らだけでは無理だ
”奴ら”に正面から立ち向える人間は、現状では本郷麻衣しかいない
そして私があの子を守らなくては…
元の雇い主と構えるのは本意ではないが、私はこの地の女たちに魅了された
彼女らの放つ、あの輝きを失わせてはならない…
...
「おー、バグちゃん、こんちわ。いやー、聞いたわ。祥子とは気を失うまで戦ったんだってね。お疲れさんでした、はは…」
どうも、こいつには調子を狂わされる
「でもさー、なんで”ここ”な訳?私とは、喫茶店でお茶とかじゃないの、なにゆえさ?」
「”ここ”がよかったんだ。お前と今日の話をするにはな…。私は参拝を済ませた。お前もせっかくだから祈願して来い。危険な戦いになるんだからな、これからの敵とは…」
「そうね。まあ、しっかり頼むぞって、気合い入れてくるわ」
なんだ、コイツ、神様に向かって!
バチ当たりなヤツだ…
...
「…お待たせ。ああ、そこの石段に座って話そうよ」
麻衣と私は、最上段の石段に並んで腰を下ろした
猛る女の伝説を今に伝える逆髪神社…
軽く50段はある、傾斜のきつい長い石段を見下ろすと、何とも勇壮だ
ここからの眺めもいい
風もなく秋晴れもあってか、心が洗われるな
”ここ”の発する気脈は特異だ
境内を覆う杉やクヌギの木々は、まるで目を見開き、深く息吹いているようだ
ここの気は蒸溜を巡らせ、人の深淵に入り込んでくる
おそらく感性が研ぎ澄まされれば、眠っているか否定し続けている、自分の中の深い領域を刺衝されることだろう
コイツ、ひょっとして…
そこのことを感受していて、”こんな”態度なのか?
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