6点

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6点

【直人side】  数学の小テスト。  ……20点中6点。  母さんに見せたら、絶対叱られる…。  塾につっこまれるかもしれない。  全然勉強しないでテスト受けちゃったからなー。  まあ、何もしないで6点とれたからいい?とか一瞬逃げで考えるけれど、いい訳がない。 やばいなー…うーんーうーーんうーーーん。 【怜side】  昨日サッカー部に 本入部届を出した。  本入部届の受付が、どの部も今週末まで。1年が本格的に部活に参加するのは、全ての部で、来週からになっている。  なので、今週水木金と週末まで、部活は無い。  クラスの奴らと帰ろうと下駄箱で靴を履いていたら、見るからにどんよりした直人に出会った。 「…なお、どした? 珍しいな、一人か?」 「――――…ちょっと数学の先生のとこに行ってて」 「ふうん…?」 「怜、先行くぞー?」 「…ああ、じゃーな」  直人の所で足を止めた怜を見て、クラスの皆が先に帰っていったので、どんより直人の近くに行って、しゃがむ。 「…で?どした?」 「…怜、最初の小テストやった? 数学の」 「ん、昨日やった」 「何点だった?」 「20点」 「えっ お前って頭いいの??」 「……ていうか、出る範囲決まってたし。まだ簡単じゃねえ?」 「…………」 「なお、何点だった?」 「――――…6点」 「…んー… つか、勉強した?」 「しなかった。 ていうか、テストってすっかり忘れてて」 「勉強してから、解いてみれば?」 「そう思って、昼に幸也とかに教えてもらってたんだけどさー。良く分からなくて、ちょっと数学の先生のところにいったんだけど… そしたら、今日帰って、教科書読み直してから、明日もっかい来いって言われた」 「……一からやってこいって言われたわけか」  ぷ、と笑うと。  直がため息。 「帰ったら数学…はー」  どんよりな直人に、クスクス笑って。 「あーそういえば――――…今日から三日間、暇だよな、オレ達」 「…?」 「うち、親、夕方までかえってこねーから、来てもいいけど」 「……え?」 「教えてやろうかって、言ってんだけど」 「――――…マジで?」 「マジで。だから早く帰ろうぜ」  うって変わって元気になった直人は、さっさと靴を履き替えて。 「早く、怜 早くいこー」 「つか、走んな」 「えーだって、はやくー」 「走んなくても時間あるだろ」 「やだ、早く―」  はー。  ダメだあれ。  ずんずん進んでいって、振り返って、ついてきてない怜を、おーいと、呼んでる直人に苦笑い。  …6点か。 100点満点だと、30点てことだよな。  …なかなかにアホだな。  ぷ、と笑いながら。  人に教えてやろうなんて、面倒なことを平気で言った自分が不思議で。  やっぱ、直に甘すぎるな …オレ。  最近、よく感じることを、また改めて感じてしまった。
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