入学式

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入学式

【直人side】  今日は中学の入学式。  210人のうち、同じ小学校が120人位は居るから、知ってるメンツも多い。地元のサッカーチームにも入っていたから、そっちの知り合いも多いし、だからそういう意味では緊張はしない。  でも、なんか、かちっとした学ランを着ると、少し緊張。 「直人、こっち向いて」 「はーい、いってきまーす」  母さんに写真を撮られながら別れ、昇降口に貼られたクラス分けの紙を見て、1-1の教室に向かった。 「直人一緒だなー」  幸也(ゆきや)(しゅん)康太(こうた)、仲良しのメンバーの顔にちょっとほっとする。 「やっぱりちょっと緊張してたから、お前ら見たらほっとした」 「うわ、何珍しいこといってんの、直人」 「ちょっとは緊張するだろ」 「まあなー…あ、オレ、始まる前にトイレー」  幸也の言葉に、「あ、オレも」「オレも」と結局全員行くことになった。  それなりに皆、緊張してるのかも。  廊下を、トイレに向かって走ってく俊の後ろを小走りしていくと。  不意に階段から現れた奴と、俊が、ぶつかった。 「うわ」  直人の前に俊が転がる。 「俊大丈夫?」  走るからだよ…と、直人が言いながら、立ち上がらせていると。  ぶつかりそうになった奴が、迷惑そうにこっちを見ていた。 「廊下走るなって、小学生ん時にならわなかった?」  冷静な、そんな一言に、俊が、かちーん、ときたみたいで。 「お前だって急に出てくるから悪いんだろっ」 「は? オレは普通に上がってきただけ。お前が走ってこなかったら、こんな風になってねーから」 「っっ なにこいつっ、すげーむかつくんですけど…」 「もー、俊が走ってたから悪いんだろー。まあオレもその後小走りしてたけど…」  まあまあ、と、俊を押さえておいて。 「ごめんね。トイレに急いでたから…」  直人がそう言うと、一瞬黙って。 「…分かればいーし。てか、謝るべきは、お前じゃなくて、そっちだけど」 「何をー!」 「あはは。 お前、おもしろ… すっげーはっきり言うな」 「何が面白いんだよ!直人どけー」 「面白いじゃん。ていうか、早くトイレいこ」  俊をよいしょと腕で押しながら、直人は、振り返った。 「名前なに?あと何組?」 「…佐藤 怜(さとう れい)。2組」 「オレ、小坂直人(こさか なおと)。1組だよーよろしく。またねー」 「お前なに自己紹介してんだよっ」 「もーうるさい、ほんとはお前が謝るとこだからなー、俊のアホたれ」 「直人ーどっちの味方だー!」 「…これに関しては、佐藤の味方」 「ふざけんなー」 「ふざけてないし。幸也ー康太ー 俊引っ張ってー」  2人が嫌そうに戻ってくるのを見ながら、怜を振り返る。  まだそこに立ってた。  背が高い。イケメン。気が強そう。でも、言葉は冷静。  …立ってるだけで目立つなー。 「またね」  バイバイ、と手を振って、3人の後ろまで急いだ。 【怜side】  210人中、一番近くの小学校から120人、怜の小学校から70人、のこり20人は転入生だったり、あとは少し遠くの小学校の数校から集まってきている。  知ってる顔も多い。適当に挨拶しながら、階段を上り終えたところで、走ってきたアホとぶつかった。相手だけ転がるが、なにやら、こっちが悪いかのような目を向けられたので、冷めた感じで突き放した。  そいつと居たのが、「小坂直人」。  初対面だけど、名前は知ってた。  というのも。  幼馴染の江藤 守(えとう まもる)が、同じサッカーチームの「直人」のことをしょっちゅう話していたから。  守は学区が違って東森中学校区域、怜は南中学校。  南中に直人も行くから仲良くしろよ。絶対気が合うから。と、春休みに何度も薦められた。まあ、サッカー部で会ったらな、なんて返していたのだけれど。  まさか、あんな形で、初対面を果たすとは思わなかった。  ぶつかってきたアホを押さえながら、笑顔で、話しかけてきた。  ……変な奴。  まあ確かに、守とは、気が合うだろうな。  良い奴同士で。  入学式、クラスごとにあいうえお順の出席番号で並んで、体育館に入った。先に1組が並んでいて、後から2組が1組の隣に並ぶ。並んだ瞬間、たまたま隣にいる直人に気付いて、あ、と思ったら、直人も気づいて、怜を見上げてきた。 「あ。さっきの。 佐藤怜、だよな?」 「…ああ」 「――――…さっきごめんね。 俊、良い奴なんだけど、たまにあほで…」  小声で話し、クスクス笑ってる。 「――――…東SCの、江藤 守(えとう まもる)分かる?」 「え?」  不意の言葉にびっくりした顔で、怜を振り仰ぐ。  背はちっちゃいな。150センチくらいかな。  結構見下ろす感じ。 「守、分かるよ。サッカーチームの友達」 「オレ、守の幼馴染」 「あ、そうなんだ。…あ、もしかして、クラブチームに行ってた…?」 「ん」 「守がよく言ってた。会わせたいって」 「オレはお前と仲良くしろって言われた」 「――――…ぷ。何それ。 守ってば…」  面白いなあ、なんて言って、クスクス笑ってる。  そこでちょうど生徒が全員並び、会話は終わった。  これが、直人と、出会った日。  家に帰ってから、守に連絡を入れた。 「小坂直人としゃべった」  入れた瞬間既読がついて、返信がきた。 「同じクラスだった?」 「隣。でも廊下で会って、たまたま話した」 「へー。どうだった?」  どうだった?  ――――…背、小さい。  でっかい目。ふわふわした髪の毛。  明るい笑顔と、柔らかい話口調。が、見た目。 「まだそこまで話してない」  そう返すと、少しして。 「お前は、クールだとか言われてモテるけど、あいつは、元気で明るくて、誰にでも優しいからモテるんだよ。なんか、真逆な感じ」 「へー。モテるんだ」  というか、面倒見良くて女子にも優しくて、モテまくりのお前に言われてもな…。  どうせ否定されて面倒だから、そこは送らない。 「仲の良い子に試合の話とかするみたいでさ、その子たちがわざわざ応援にくんの。なかなか無いよな」 「へえー」 「まあ、あいつほんと良い奴だから、いじめんなよー」 「…いじめねーけど。 なんで」 「お前、可愛いといじるじゃん。 Sっ気、半端ないから」 「…男にはしねーし」 「だって、直人ってすげえ可愛いよ?」 「はー?」 「うん。だから、守ってやって」 「……お前、ほんと意味わかんねえな」 「まーいーから、頼んだよ」 「はいはい」  適当に返事をして、それで、終わりにした。 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ このふたり。 最初「会話だけで萌えれるか?」というお試しで、会話だけで、数話書いたんですが…結論から言いますと、会話だけじゃ物足りなくなりまして。こういう形になりました(;´・ω・) 前の形で、本棚に入れてくださってた方、コメントくださってた方、すみません(;'∀') お気に召さなかったら、本棚外して頂いても…(;'∀') 途中で変えて、ほんとにすみません。あくまでお試しだったのでお許しを…。 どうやって書こうか迷った末、 日々、進んでいく、両サイドのお話の形で書いていってみることに。 すごく短い時もあれば、ながい時もあるかも。 一ページ=一日 で日記みたいな感じで書いていきます。 中学生なので、すこーしずつ、好きだなーってなってく感じを書いていく…予定だけど、まあ変わるかも。 適当にお付き合いいただけたら…(^^) (2020/12/29)
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