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スパルタ?
【直人side】
「はー? なんでそーなんの。ちがう」
「…………」
教えてやるとかいったくせに。
かなりのスパルタだった。
「さっきこの問題でどーやったか、もう一回考えろ」
「……うーーー」
「――――…考えた?」
「…むり」
「お前、次無理って言ったら、もー口きかない」
「えええーー…そんなのむ…」
「…無理、言った?」
「言ってない…っ」
「じゃあ、まずこっち、考えろ。 教科書、ここ読んで」
「はい…」
ちゃんと教えてくんないじゃんか。
これ見ろとか、これ考えろとか。
…怜の意地悪。
心の中で愚痴りながら、必死で教科書を読む。
「………あ。分かったかも」
「――――…」
教科書読んで、さっきの問題見直して、それでもう一回ちゃんと考えてみたら。
「――――…よし、正解」
ぽん、と頭を撫でられる。
「はい、次。こっち」
「――――…うん」
「ここ読んでから」
「うん」
怜が開いてくれる教科書を読んで、問題といて。
間違えると、「ちげーから。よく読め」ときつめの一言が飛んでくるけれど。 がんばって読み直して、正解すると、ふ、と目が優しく緩んで、ほめてくれる。
「――――…」
せっせとがんばってる間に、間違えた問題の解き直しも、最後まで来た。
「怜、これで終わり」
「ん、頑張れ」
ふと気づくと、怜が何かをせっせと書いてる。
「なにしてんの?」
「違う問題で、小テストしてやる」
「え゛え゛っ やだー」
「やだじゃねえ。 オレの問題、正解したら、解放してやるから」
「…………っ」
「とりあえず、その最後、ちゃんとやって」
怜の声には、なんでか逆らえない。
「はーい…」
さすがラストの問題。
……難しい……… けど。あれ? 解けたぞ?
「怜、これであってる??」
「――――…あってる。 できるじゃん、なお」
くす、と笑ってくれる。
「…じゃあ、これ、20問。はい、解いて。制限時間、15分」
優しいと思ったら。
「…怜のおに……っ」
怜が書いてくれた問題を、解き始めた。
【怜side】
さっきやった問題の、数字を変えたり、プラスマイナスを変えたりしただけの、20問。家に来た時の直人はかなりひどくて、おいおい、これは、何日かかるんだと思ったけれど。
ちゃんとやりだせば、早かった。
頭は悪くない。まあ、素直だからな。変な思い込みとかはすぐ捨てられる。
制限時間15分と言ったけれど、もうすぐ終わりそう。8分位かな。
「――――……できた…!」
「ん、おっけ。全部あってる」
「え。ほんと? そっちからで分かるの?」
「あってるよ」
「やったーーーーーー!」
「大丈夫だろ、これで」
「うん、ありがとう、すっごいよく分かった」
「ん」
「最初は、もう、読め、考えろ、見直せしか言わない、スパルタの意地悪かと思ったけど…」
「おい」
「…うそ」
ぷぷ、と笑って。
「……すっごいありがと、怜」
ほくほくした顔で笑ってる。
――――…ほんと、素直。
直人の頭をナデナデしてしまったら。
「だから、恥ずかしいから、撫でんなってば…」
「――――…でもなんか、お前見てると、撫でたくなる」
「――――……なにそれ」
直人は、クスクス笑って、怜を見る。
「…なんでだろな。不思議」
「――――……オレも、不思議」
「ん?」
「…オレ、よく撫でられるんだけどさ。 怜に撫でられると、すごい照れる」
「――――……」
よく撫でられる、にちょっと腹が立つ。
…誰に?と思いつつ。
「――――…」
直人の髪を、くしゃくしゃ撫でて、立ち上がる。
「コーヒーとココア、どっち?」
「ココア」
わーい、とばかりに、笑顔の直人に、ぷ、と笑った。
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