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休日
【直人side】
元サッカーチームで、怜と守と試合をした後、それぞれ家に帰ってシャワーを浴びてから、近くのファミレスで落ち合うことになった。
シャワーを浴びて、ドライヤーで適当に髪を乾かすと、チャリで店に急ぐ。 店の駐輪場で、守に会った。
「もう怜は入ってるみたい。このチャリそうだよな」
「早いね。オレ超急いだんだけどなー」
「そっちの部活始まるの来週なんだって?」
「うん。だから今日誘ってくれて良かった」
チャリを止めて、鍵をとりながらそう言う。
「守に会うのも久しぶりだもんね」
「こっちも来週から部活始まる。やっぱり学校違うと、会えないよな」
「でもやっぱりたまには会おうよ。寂しいし」
「ん」
守が、クスクス笑う。
「なあ、怜ってクラス違うんだろ?」
「うん。違う」
「部活もまだそんなに始まってないんだろ?」
「うん、体験に何回かいっただけ」
「仲良さそうだよな」
「うん。…オレが、好きなのかも。怜」
「へえ?」
「委員一緒にやろー、とか、朝もいっつも怜のとこまで走っちゃうし。そういうことしてるから、かもしれない」
あはは、と笑ってしまうと。
「直人が人と仲良くなるのはいつもじゃん。 オレは怜の方が不思議」
「そう?不思議て??」
「うーん。…直人に優しくねえ?」
「…スパルタな時もあるけどな」
クスクス笑ってしまう。
中に入って、きょろ、と見回すと。
怜が手をあげた。
「怜、居た」
「ん」
怜のテーブルについて、怜の目の前に座った。
「怜、早いね」
「…つか直、髪超濡れてる」
「ドライヤーしたよ?」
「中途半端」
「今寒くないから大丈夫」
「はいはい…」
そんな会話に、直人の隣に座った守がふと笑った。
「怜、母親か」
「は?」
守の言葉に一言返した怜に、
「オレもたまにそう思う…」
「…は?」
直人も同意したら、更に一言で返される。
「…怜がそんな風に世話してるの、笑える」
守が言った一言に、怜は特に何も言わず、メニューを押し付けてきた。
そんな怜に、また守が笑ってる。
怜と守が幼馴染で仲良しなのは聞いてたけど、実際一緒に居るのを見るのは初めてなので、何だか少し、不思議な気分。
お互い遠慮とかが全然ない感じで、ほんとに仲いいんだなー、と思う。
【怜side】
直人がトイレに行った瞬間。
「怜、直人のこと、好き?」
「――――…は?」
「…大好きだろ」
「何言ってんの、お前」
「変な意味じゃなくてさ」
「…変な意味ってなんだよ」
「…よくわかんね」
言って、守がクスクス笑ってる。
「だってオレ、怜がそんな風に誰かに構うの初めてみたからさー、なんか、びっくり。自覚ねえの?」
「――――……」
――――…自覚は……ある、かな。
つか、もともとは、お前が、直人は可愛いからとかいうから。
「直人が懐くのは、よくあることだけど… でもそれも、結構な懐きっぷりだしなー…」
そんな守の言葉に返事をしないでいると。
トイレから戻ってきた直人が、怜の隣に座って、「これからどーする?」と笑う。
「直、何かしたいことあるのか?」
「んー。 二人が元気なら、もうちょっとサッカーしたい」
「…午後もサッカーするなら、なんでシャワー浴びたんだよ」
苦笑いの怜に、直人も少し笑う。
「さっきは汗だくだったからさ。 あ、でもサッカー以外でもいいけど」
「守は? どーしたい?」
怜が聞くと、守は即答で。
「オレはなんでも」
と言う。
「…じゃ、とりあえず、サッカーするか」
怜が言うと、直人が、ぱっと、笑顔になった。
「やった」
嬉しそうに笑う直人に、つい、ふ、と笑ってしまう。
なんかニヤニヤしてる守に何か言われるより早く、「いこうぜ」と、急かして立ち上がらせる。
「ボール、家からとってきて、河原の下の空き地に集合しよ」
「うん、そうしよ」
直人がウキウキついてくる。
楽しそうなの見てると、笑ってしまう。
「だいすき」 ねえ…。
まあ自覚、は…あるかな。
【守side】
小さい頃からついこないだまで、平日はずっと一緒だった怜と、土日祝日ずっと一緒だった直人。
この三人で、遊ぶとか、なかなか不思議。
空き地でサッカーして、ちょっと休憩で休んで水を飲みながら。
「その内中学同士で試合やるよな。 楽しみだよな」
そう言うと、直人がうんうん、と楽しそうに頷いた。怜も、ふ、と笑ってる。
「なあ、リフティングしようぜ」
急に怜が言うと、「いいよー」と直人が立ち上がる。
「怜、最高何回?」
「600とか700だったかな…忘れた」
「え、それ何時間かかるの」
「何時間はかかんねえよ」
怜が可笑しそうに笑ってる。
「オレ最高200とかじゃなかったかなー…」
「200できりゃすぐその先いけるだろ」
「えー、いけないよー」
「いけるって。がんばれ」
二人でボールを上に蹴り上げ、リフティングの練習開始。
「守もやろうよー」
「おー」
直人に呼ばれて、立ち上がる。
結局その日は、暗くなるまで、三人でサッカーをして、過ごした。
直人は、超懐いてて。
怜は、超構ってて。
…なんか可愛いな、二人。
そんな風に思って、一日を終えた。
(2021/2/10)
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