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エンドロール
平手打ちの音がエントランスに響いた。
その手際のよさを間近で眺めていた彼女の目には、私があたかも日常的に平手打ちしているように見えただろう。
我ながらスカッとする良い音だった。
しかしこれでも2回目だ。
人生2度目の、彼への平手打ち。
「このたびはとんだ茶番をお見せしてしまい申し訳ございません」
自分の発した「申し訳ございません」によって、私は反射的に45度の礼をした。職業病だ。
「今後はこのようなことのないように努めて参ります。そんなわけで、こいつは引き取らせていただきますので」
戸惑う彼女を置いて、私たちはラブホの大きな扉を開けて外へ出る。
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