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「ただいまー」
家に帰るとドタドタと足音が聞こえた。
「お兄ちゃんお帰りー!」
「奈々、騒がしいからやめろよ」
こいつは1個下の妹の「奈々(なな)」、妹がいるのにあまり女と話すのに慣れないのは所詮妹は妹であって女としては見れない。 まぁ見ちゃマズいが……
「ん!? お兄ちゃん誰と遊んだの?」
「え? 何で?」
「女の人の匂いがする」
俺の体をクンクンと嗅いでいた。
「お兄ちゃんからなんで女の人の匂いがするんだろう? もしかしてデート? いや、それはあり得ないよねぇ」
「酷くね? 今日はクラスの奴らでカラオケ行くって言っただろ?」
「へぇ、じゃあ女の子と密着してたんだねぇ? だからこんなに匂いするんだ、お兄ちゃんなかなかやるじゃん!」
「まぁカラオケだから。たまたまそんなんなる時もあるだろ?」
鋭い奴だなと思ったけど確かに岸本は肩がぶつかるくらい密着してたな。 今思うと相当照れる。
「顔赤くなってるよ〜、もしかしてその子の事好きになっちゃった? 」
「バカな事言ってんじゃねぇよ!」
「あははッ、お兄ちゃん何ムキになってんの? わかりやす〜。 まぁ今までお兄ちゃん女っ気全然なかったから仕方ないよねぇ、私がいるのに全然慣れないもんね」
「お前は所詮妹だ。チビの時から一緒だからノーカンだ」
「はいはい、私もお兄ちゃんはノーカンです。 それでカラオケだけ行ったの?」
「いや、その後デパートにも寄ったかな」
「嘘!? まさかそのままデート?」
「違うって。 普通に買い物付き合って欲しいって言われたから行っただけだよ」
「その匂いの主が?」
「匂いの主って…… いいや、ただの友達」
「女子」
「まぁそうだけど?」
「嘘ー!? わざわざお兄ちゃんにそんなの付き合って言うならもしかしてその女子お兄ちゃんに気があるんじゃない? だってお兄ちゃんを誘うくらいだよ?」
「なんでそんなにディスるんだよ! 普通に仲良いからだろ? それだけだ」
「はぁ、その子の苦労がわかるわ、こんな鈍感男のお兄ちゃんが相手なんて。あ、それなら今度お兄ちゃんの友達家に招待したら?」
「意味不明な事言ってんじゃねぇよ。それに家に呼んでどうするんだよ? 何もする事ないしつまんねぇだろ? てか母さんとかは?」
「2人で仲良くデートに行ったから今日は適当に何か食べててだって」
「ふぅん、じゃあどうすんだ?」
「へへー! 今日は私がお鍋を作ったからそれ食べてね」
「お! ちょっとは女らしくなってきたな」
「お兄ちゃんに言われると凄くムカつくんですけど? それにそれ差別ーッ!!」
「はいはい、ごめんな。 じゃあ食べるか」
「はい! 私特製のすき焼きだよ、今日は関西風にしてみました」
「へぇ、なんか違うのか?」
「まったく…… 作り甲斐がないわねぇお兄ちゃんは!」
「ははッ、冗談だよ。 いただきます」
そして俺は奈々と夕飯を食べ風呂に入り今日は出掛けて疲れたので寝ようと思ったがスマホを一応確認するとLINEが入っていた。
もしかして岸本かも! と期待して開くと凛からだった。
『今日は付き合ってくれてありがとね! お礼に今日買った服今着てみたから送るね!』
鏡越しに凛が今日買った服を着た写メが送られていた。 スカートの裾を摘んで上げていた。
『瑛太には刺激が強かったかなぁ? 興奮してもいいよ(笑)』
と来ていた。 何やってんだかこいつはと思い、一応可愛いし似合ってると返信しておいた。
するとすぐに返事が帰ってきた。
『本当? やったぁ! じゃあやっぱり次遊ぶ時これ着ていくね』
とスタンプ付きで返事がきた。
そしてまたLINEからメッセージが来た。 今度はなんだと思い見ると岸本からだった。
『広瀬君、今日は楽しかったよ。 またこんな機会あったら遊ぼうね? 』
やった、岸本からメッセージが来た! 俺は心の中で歓喜した。
『俺も楽しかったよ、俺もまた遊びたいな』
と返事を返しておいた。
すると返事がきた。
『うん、そうだね! じゃあ約束ね!』
また遊べるという事だろうか? 俺は嬉しくなってその画面を見ていたらいつの間にかその日は眠ってしまっていた。
そして朝になり寝てしまった事に気付いた俺は激しく後悔した、もっと話しておけば良かったかな? いや、流石にしつこいと思われないか?
もう1度岸本に何か送るべきだろうか? でも時間が空いてしまった今送ってどうする? ていうか何を送ればいいんだ? と考え込んでいるうちにその日は終わってしまった。
そして送るタイミングを全く失っていた俺は昨日の岸本の約束だよという返信をボーッと見ていた。
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