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春になり高校へ入学し新しい学校生活をスタートした。 俺は「広瀬 瑛太(ひろせ えいた)」
華々しいかはよくわからないが高校生活が始まって1ヶ月、友人も何人か同じ高校に入学したがクラス割りで別々になってしまった。
「瑛太おはよう!」
少し息が上がった様子で走って乱れたであろうセミロングの髪を直しながら朝の挨拶をしてきたこいつは「長浜 凛(ながはま りん)」、高校に入ってから仲良くなった今の俺の唯一の女の子の友達だ。 席が隣だから自然と仲良くなったのだが。
「凛おはよう、今日は遅いんだな」
「そうなんだよ! 忘れ物しちゃって家に戻ってさぁ〜」
「せっかちだもんなぁ凛は。道理で今日は見掛けないと思ったよ」
「見掛けなかったんなら探してくれてもいいのに」
「そんな探す義理もないだろ、お前学校から家近いんだから」
「冷たぁ〜、瑛太それじゃあモテないよ?」
「別にモテたくもないし」
「そうだねぇ、瑛太は奥手だもんね」
凛は俺をからかい席に座った。 そして俺は今片思いをしていた。 廊下側の席に目を向ける、俺はその子に淡い恋心を抱いていた。
モテたくはないと言った俺だけど例外もある、その例外があの子……
「岸本 伶奈 (きしもと れな)」、彼女を見た時から俺は彼女を自然と目で追うようになっていた。
俺が彼女に目を向けていると横から手が伸びてきた。
「おーい、意識ある?」
凛が俺の目を向けていた方向にズイッと割り込んできた。
「な、なんだよ?」
「また岸本さんを見てたの? 露骨過ぎー」
「悪いかよ、お前に関係ないだろ?」
「そんなジーッと見てると気味悪がられるよ? 私だったら良いけど! 」
キャッと恥じらいで顔を隠してわざとらしく俺をからかってくる凛に溜息が出た。 こいつも相当可愛い。 もし俺が岸本より早くこいつを見掛けていたらこいつを好きになってたかもしれない…… なんて思う俺は浮気性か。
だけど今は貴重な女友達だ、凛だって女だから女の気持ちがわかるに違いない。 凛で結構女の免疫はついたと思うけど奥手は奥手。 俺は小中とまともに女の子と話した事あまりなかったもんな。
だから高校に入り凛みたいな女の子とすぐ仲良くなれてビックリした、まぁ凛から積極的に俺に話し掛けて来たから俺は相変わらずといえばそうなんだが……
「ちょっと〜、なんとか反応したら? 私バカみたいじゃん!」
「え? なんだっけ?」
「もう! そんなに岸本さんがいいの? 瑛太のくせに!」
「なんだよ? その瑛太のくせにってのは」
「瑛太には高嶺の花だよ? 岸本さんは。 私が言うんだから間違いない!」
「ふぅん、まぁ凛もモテそうだもんな」
「そうなのよ、この前サッカー部の先輩に告白されたんだよぉ?」
「へぇ、それで?」
「うん、お断りしちゃった」
「なんで?」
「私のタイプじゃないからかな」
「お前のタイプってなんだよ?」
「あ、気になる? 私のタイプ! どうしようかなぁ〜」
「いやいや、もったいぶるとこか?」
「え〜、瑛太は私の好み気にならないの?」
そう言われると岸本の好みってどんなんだろな? と岸本に目線を向ける。 女子と楽しそうに会話している岸本はとても可愛らしい。
俺の隣がもし岸本だったらこいつみたいに仲良くなれたんだろうか? と考えていた。
「ちょっと! また私が話している途中で岸本さんに目が行ってるよ? 」
「あれ? そうだったか? それでお前の好みのタイプは?」
「もういいや、なんか言いたくなくなってきた」
プイッと頰を膨らませ凛はそっぽを向いてしまった。 怒らせちゃったかな? なんでだ? ここいら辺がわかってない俺はまだまだなんだろう。
「そういえば瑛太ってさ……」
そっぽを向きながら凛は話し掛けてきた。
「童貞でしょ?」
「はぁ!?」
「あははは、やっぱり!」
「いきなりなんだよ!? そういう凛はどうなんだよ?」
「あ〜、女の子にそういう事聞いちゃダメなんだよ」
凛はしてやったりな顔をこちらに向け勝ち誇ったように言った。
恥ずかしくなったので俺は朝のHRが始まるまで寝る事にした。
「ねぇ、広瀬くん、起きて」
「ん〜、なんだよ?」
俺の肩に手が触れゆさゆさと揺さぶられたのでウザくてその手を払った。
そして顔を上げるとその手の主は岸本だった。
「え?」
俺が困惑していると隣に居た凛がにししと笑っていた。
「なかなか起きないから岸本さんに頼んで起こしてもらったの、てへへ」
こいつ…… 面白がってわざとやったな!
「仲良いいんだね、広瀬君と長浜さんって」
「あ、いや、そんなわけでは」
「瑛太は私以外の女の子とあまり話すの慣れてないからね、岸本さんに試しに振ってみたの」
「そうなんだ? 私もあまり男子と話すの得意じゃないから一緒だね」
岸本はそう言いじゃあ後は戻るねと言って席に戻った。
「お前いきなりなんて事してくれたんだよ……」
「感謝してよねぇ、私のお陰で憧れの岸本さんの手触れたじゃない! はい!」
そう言うと凛は岸本を触った俺の手に自分の手を置き握ってきた。
「これは?」
「瑛太の女の子の免疫のなさを私が補ってあげただけ。 ありがたく思いなさい!」
「はぁ? 」
そう言われて少し恥ずかしくなって凛の手を振り払った。
ふふん! と偉そうな顔をしている凛を他所に俺の視線は岸本に向いた。
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