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風呂上がりにドライヤーを済ませ、一時間ほど、リラクゼーションの音楽をかけて、読書に没頭する。今夜は、あの客が選んだ本にした。あの男がなにに興味を持って読むのか――その感情のいくばくかを共有したかった。
* * *
火曜日は定休日だ。この町――花見町を彼女は気に入っている。通っていた大学が近くにあり、卒業後も、都心にほど近いというのが理由で、この町に住み続けている。
都心に勤務したことはあるが、激務がたたり、彼女は退職し――なにげなく、古本屋の、店員募集の貼り紙を見て応募をしたのが、彼女があの古本屋に勤務するに至った経緯である。
さて彼女の休日の定番は書店めぐりである。火曜日以外のほぼ毎日、彼女は勤務している。彼女が店で扱うのは古本が主で――とはいえ、一介の書店員として、世間の動向を把握する必要がある。また、彼女自身無類の本好きであるゆえ、本棚に入りきらないほどに本がある。なのに買う辺り、病的だなと、彼女自身笑ってしまうのだが。
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