家族になりきれない人達

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その日の晩御飯はグラタンにした。 おそらく仕事が始まればまた簡単な料理しか作れなくなるだろう、そう思い心を込めて作っていく。 今夜は聡も早く帰れると言っていた。 包丁で玉ねぎをスライスしながら凛子は隣の部屋をみる。 幸人を抱っこしている義母。 そして義父も嬉しそうに喋りかけていた。テレビは野球がついている。 「大きくなったら野球選手もいいな。」 不意に義父の声が聞こえた。 「あらだめよ。この子にはきちんと跡を継いでもらうんですから。遠くの大学には出せないわ。」 と、義母。 凛子は聞こえないふりをした。 いや、聞かなかったことにした。知らんぷりして中に入れるエビの下ごしらえをしていく。 「ただいまー。」 玄関で聡の声がする。 どうやら帰ってきたようだ。思ったよりも早い。凛子は手早く耐熱の大皿に炒めた具材とソースを入れる。上からチーズとパン粉を振りかけて……オーブンを余熱設定にした。 聡はすぐにキッチンに入ってきた。 「なに、美味そうな匂い!」 「うん。今夜はグラタンなの。」 それを聞いてニコッと笑う聡。 「嬉しいな。久しぶりだね。」 そして出来上がったグラタンをテーブルの真ん中に置き、簡単なサラダやカルパッチョを作っていく。今夜はみんなでワインを飲もう、と思って安いものだが1本買ってきていた。
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