魔法基礎

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櫻田からの簡単な説教は生徒達全員も反応した。『意見をコロコロ変えるな』という世間とは真逆な説教であるため、皆の印象に残る。やはりこの教師、何かが違う。 前向きすぎる橘もその説教はしっかり効いたようで、彼女は着席した。 『そんなわけで進路相談にはのる。うちに通えないからと言って気に病む必要はない。次に今日の授業内容だ。まず、魔力測定と自己紹介の時間にあてたい』 助手役らしい教師の菊池が機材を教卓へと運ぶ。コードの伸びた小さな箱。それらは生徒達も見たことがある。入試の前にチェックした、魔力測定機だ。 『まずは魔力だ。最近発見された、人体が発する万能物質。体内を巡るそれを外に出して動かし、変化させたりするのが魔法だ、ということくらいは皆さすがに知っているな?』 生徒達は確認するまでもない事だ。魔法とは万能物質である魔力を操作し、物理的にありえない現象を起こすこと。その使い道は多岐に渡る。櫻田の場合は視力にしているし、硬化させ盾にして爆弾を防いだ事もあった。 魔力や魔法というのは物語のおかげで通りがいいから使用している名称だ。現在研究中のそれは正式名称は難しくしょっちゅう変わるから正式名称を使うものはなんらかの発表ぐらいだ。 『受験勉強で忘れたかもしれないもう一度説明する。これは魔力測定機。指先を当てて、指先に流れている魔力を数値化するというものだ。単位はMP……でいいなもう。まだ規格統一はされてないし、測定方法もこれから変わるかもしれない。けど今はこれで五十ないとこの学校には試験すら受けられない。だからここにいる生徒達はだいたい五十から百ぐらいだろう』 やはり魔法はまだ公に研究されて短い学問なので将来的には変更があるかもしれないが、ここにいる生徒達は一定の基準はクリアしている。しかしこの数値が高いほど偉いだとか思われては困る櫻田は、さらにつけ加える。 『その数字はあくまでただの基準だ。高いからってそれをうまく使えるとは限らない。魔力を動かしたり変化させたりするのは本人の感覚が大きい。そこの菊池先生は未来予知ができるが、それは魔力を未来に送り、その魔力が知った情報を本人が総合してるという、メチャクチャな使い方だ。俺にも真似できない』 名を出され、菊池は照れたように笑った。盲目だが魔力を飛ばして視力にしている櫻田と、未来に魔力を飛ばして未来を知るという菊池。二人の魔力の使い方は大きく分類すれば似ている。しかし櫻田は菊池の真似はできないし、菊池も同じくだ。結局は本人のセンスによる。 『それに計測するのは指先で、冷え性で血液が末端にいかないように、指先に魔力がいかない体質の者もいると思う。急に増えたり減ったりもする。だから数値はこれから魔力増強の授業のために記録しておいてほしい』 魔法基礎では魔力増強の授業を行う。魔力はあったがその自覚があまりない生徒達はほっとした 。その授業さえ受ければ魔力は維持できそうだ。
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