魔法基礎

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『そして測定ついでに自己紹介をしてもらう。もう入学準備や寮で皆さんざんやってただろうけど、一度学年全員いる時にやっておいてほしい。この学校はおいおい技能や学習分野でクラスを細かく分けて授業をすることになる。今あるクラスのくくりはあまり考えない方がいい』 今は基礎的な座学だけなので四十人クラス二つで問題ないが、将来的に能力ごとに授業をする事になる。つまり誰のいるグループで学習するかもわからないため一度全員との自己紹介が必要だと言うことだった。 『まずは前に出て測定。あとはマイクを使って、名前と魔法を使って何をしたいか、どうなりたいかぐらいを語ってくれればいい。あとは自由に。それじゃ後ろの席から』 そこから先は前に出て魔力を測定し、マイクを使って自己紹介をすることになった。 『ま、松沢梨香子です。魔法の事は何もわからないので、とにかく魔法っぽいことがしたいです』 松沢のように緊張した様子の者もいたし、すでに自己紹介を終えているからか慣れている者もいる。 魔力も70あたりを行ったり来たりして生徒達も飽きてきた頃、105という数値を叩き出す者がいた。すらりとした金髪の少女だ。 『藤崎レアです。見ての通りハーフというもので、母は欧州の魔女出身です』 彼女が注目されているのは魔力の数値もあるし、堂々とした聞きやすい自己紹介だからでもある。しかし一番は美少女だからかもしれない。 大人びて見える彫りの深い顔に、美しい金の髪は編まれてサイドに流している。モデルのような体にどこかの制服っぽいシャツにロングの細いプリーツスカート、それとネクタイが凛々しい雰囲気の彼女によく似合っていた。男女共に熱のこもった視線を送っている。 容姿以外でも魔女の家系というのも印象に残る。この国より魔法関係で進んでいる西では魔女がゴロゴロいるという。この学校の入試組にとっては魔法を使う職業の家の子供というだけで憧れだ。 『この百花で学び、将来は日本の魔女としてやっていけたらと思います。よろしくお願いします』 藤崎の完璧な自己紹介に拍手の音もいつもより大きかった。明確な将来の希望を語ったのも彼女が初めてかもしれない。この学校に通う者でも自分に何の魔法が使えるかわかっておらず、何になりたいかも考えていないものだ。 それからしばらくはまた生徒達も無難な自己紹介をして、最後。最前列の席に座る先程の 生徒、橘の番となる。彼女も新入生代表という情報に、藤崎のような美人ではないが小動物的な愛らしい雰囲気で人目を引く。 彼女が小さな手を測定機に差し出すと、49という数字が出た。 この学校の試験を受けるには50ないといけない。橘は泣きそうな目を櫻田に向ける。
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